携帯電話でもきれいなテレビ放送が見られる日がついにやってくる。携帯機器向けの地上デジタル放送サービス「ワンセグ」が、2006年4月1日から開始されることが決定したからだ(関連記事)。およそ半年後に開始するこのワンセグに対して、関係各社はどのような取り組みをしているのだろうか。10月6日、幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2005において、ワンセグに関するパネルディスカッションが開かれた。
東京放送(TBS) 技師長室 参与の清水孝雄氏がモデレーターを務め、TBS メディア推進局 1セグ放送開発部 部長の湯川哲生氏、KDDI 技術開発本部 メディア技術開発部 部長の中村博行氏、インデックス メディア開発担当執行役員の大森洋三氏、ソニー IT&コミュニケーションズネットワークカンパニー 開発部門 MT開発部 担当部長の小野正道氏、パイオニア モーバイルエンタテイメントカンパニー 川越事業所技術統括部 技術開発部デバイス開発一課 課長の市川俊人氏の5名が、それぞれの立場からワンセグに寄せる期待や現在の取り組みについて紹介した。
ワンセグでは放送の下に文字情報を表示する部分がある。端末は松下電器産業の「P901iTV」でTBSがコンテンツを提供した(写真:津島隆雄) |
ワンセグは地上デジタル放送用の帯域を13セグメントに分け、そのうちの1つだけを使って携帯電話などに映像や音声、データを放送するサービスだ。サービスを開始する当初に放送されるコンテンツは、地上デジタル放送とまったく同じものになる。ただし、映像と同じ画面に文字データを表示できるため、番組の関連情報や公式サイトへのリンクを表示するといったことが可能になる。
TBSの湯川氏はワンセグのデータ放送を使えば、たとえば災害時に通常の放送と一緒に災害情報を常に配信できると話す。通信の場合は多数の人が同時に電話をかけるとつながりにくくなる輻輳(ふくそう)という状況が起きるが、放送の場合は電波の届く場所であれば必ず情報を受け取れる。また、通信機能と連携させれば視聴者が番組のクイズに参加したり、Eコマースサイトで番組の関連商品などを買ったりできるようになる。
さらにTBSでは、夕方の帰宅時にワンセグを見る視聴者に対してゴールデンタイム(午後7〜10時)の番組の紹介をデータ放送で流すことで、帰宅後のゴールデンタイムに番組を見ることを促すような試みも検討しているとのことだ。
将来的には、通常の地上デジタル放送とは違う、携帯電話向け専用のコンテンツも配信したいと湯川氏は話す。携帯電話のインタラクティブ性を生かし、生放送で投票を実施して1位になった曲を放送するような歌番組などが考えられるとした。
KDDIが開発したワンセグ対応端末「W33SA」(写真:津島隆雄) |
KDDIの中村氏は、ワンセグに対応した端末の開発に関する同社の取り組みを紹介した。KDDIはNHK放送技術研究所と共同で端末の開発を続けており、2003年5月には放送と通信を連携できる小型機器を初めて公開した。このときはPDAほどの大きさだったが、2004年5月には地上デジタル放送を受信できる携帯電話端末を開発している。今回のCEATECでは三洋電機製のワンセグ対応端末「W33SA」(関連記事)を公開している。
NHKとの共同研究により、「やはりコンテンツでは放送事業者にはかなわない」(中村氏)と感じたというが、同時にビジネスモデルの異なる通信事業者と放送事業者ではさまざまな面で意識の違いがあることも感じたという。「地道な協力体制がワンセグの成功には欠かせない」(同氏)として、両者のより緊密な連携が不可欠だとした。
インデックスの大森氏は、同社がM&Aや複数の企業との提携により、映像コンテンツの配信、決済だけでなく、書籍やリアル店舗などとの連携まで可能になっていると紹介した。たとえば、映画館の配給は日活、決済はイーバンク、リアル店舗はタカラトミーなどが考えられる。これにより、ワンセグに対してもさまざまな対応が可能だと自信を見せた。
同社では今後、放送局と視聴者の双方に、ワンセグ対応サービスを提供する考え。放送局にはコンテンツのオーサリングツールの提供やコンテンツ制作、携帯電話向けサイトの構築、運営などのサービスを提供する。視聴者には携帯サイトのコンテンツやリモコンアプリケーションなどを提供することで、「ワンストップでワンセグデータソリューションに対応する」と意欲を示した。
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