サンフランシスコ発--クラウドコンピューティングがテーマのカンファレンス「Structure 08」で米国時間6月25日、Salesforce.comの幹部とMicrosoftの幹部が、「ソフトウェア対サービス」をテーマにした講演を相次いで行った。それぞれの話を聞いて驚いたのは、これまで全く異なる企業哲学を信奉してきた両社が似た結論に達していることだった。その結論とは、ソフトウェアとサービスはお互いの存在なしには構築できないということだ。
Salesforce.comの場合、共同創設者でエグゼクティブバイスプレジデントのParker Harris氏によれば、早い段階から、Salesforce.comのアーキテクトたちは単なるアプリケーションではなく、消費者向けのプラットフォームサービスを構築したいと考えていたという。だが、そこに立ちふさがったのは、消費者が必要としているのはプラットフォームではなく、アプリケーションだというビジネス上の論理だった。
「技術者としてはプラットフォームを構築したいのだが、そのプラットフォームを構築する目的から離れてしまうリスクを抱えることになる。そのため、われわれは事業を始めるにあたり、速く、シンプルで、最初から目的にかなった『サービス』を構築しようと話し合ったのだ」とHarris氏は語った。
Salesforce.comはかつてプラットフォームを開発者に公開したこともあるが、そのときに同社は、主要なアプリケーションを基盤となるアーキテクチャから分離させて考えることはできないと気づいたという。「ソフトウェアとインフラストラクチャは別々のものではなく、1つのものなのだ」とHarris氏は話した。
一方のMicrosoftも、もはやアプリケーションのことだけを考えているわけではないと述べている。同社はその度合いはまちまちながら、ローカル環境およびウェブベースで使える機能を持つさまざまなアプリケーションを構築し続けているが、同社のグローバル基盤サービス担当バイスプレジデント、Debra Chrapaty氏によれば、まさにそのために、同社はアプリケーションの効率性に着目しているのだという。アプリケーションがデータセンタ規模に拡大すると、計算効率が重要となるからだ。
Chrapaty氏は、Microsoftにとっては「1キロワットたりとも無駄にしない」ことが必要なのだと述べ、コロラド州にある「Microsoft Virtual Earth」サービスで利用しているサーバの少なくとも1台は風力発電で動かしていると付け加えた。
これまで長きにわたってソフトウェアを専業としてきたMicrosoftと、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)の申し子であるSalesforce.comの2社が、今や同じ問題を解決する必要に迫られていることに筆者は興味をそそられた。その問題とは、信頼性が高く、それぞれの顧客に開かれたオンラインアプリケーションを構築することだ。また、Microsoftが、自社のアプリケーションで利用するエネルギーに責任を負おうとしているという話には、特に好感を覚えた。こうした考え方が業界全体に広まってほしいものだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」