低所得層向けの廉価なコンピュータ提供を目指すタイ政府の計画が、思いがけない副作用を及ぼし、米Microsoftが神聖視する単一価格ポリシーを崩壊させかねないと、あるアナリストは考えている。
調査会社Gartner Hong Kongの調査担当重役であるDion Wigginsは、東南アジアのある国で考えられた厚生目的のシンプルな計画が、いかにして世界最大のソフトウェア企業に影響を及ぼすことができるかについて、次のように説明している。
今日、MicrosoftのWindows OSやOfficeは、世界のどの国でも大体同じ価格で販売されており、たとえばWindows XP Homeは199ドル、Office XPは399ドルとなっている。米ドル換算で7000ドルというタイの労働者の年収を考えれば、この価格は米国なら3000ドルに相当する。
Microsoftは、当初、タイの情報通信技術省が進めるローコストPC提供プログラムへの参加を断った。Windows OSとOfficeを搭載したPCを250ドルで販売するのは不可能というのが、その理由だった。そこで、残された唯一の選択肢はオープンソースのLinuxオペレーティングシステムの採用だったが、このLinux搭載デスクトップは大量に売れた。
Wigginsによれば、Micosoftでは、タイを担当するジェネラルマネジャーを最近新たに任命したが、ITCの提供するLinuxマシンが100万台にもなるという可能性に遅ればせながら気づいた同社は、このプログラムに参加することにしたという。
さらに、多くのPCが家庭に普及するにつれ、著作権侵害問題が一気に噴出した。ITCのプログラムでPCを手に入れた者の多くが、Linux OSに代えて海賊版のWindowsをインストールしそうだと、Wigginsはいう。
その結果、Microsoftは屈服するしかなく、Windows XP HomeとOffice標準版のタイ語バージョンを、わずか40ドルの追加料金で入手できるようにした。
さらに、Wigginsは、アジアの他の2つの国の政府が、自国での低コストPCプログラムの可能性について、Gartnerにアドバイスを求めていると語ったが、ただし具体的な国名は明らかにしなかった。
「絶え間ない価格低下の圧力、Microsoftに対する反発やタイのICT PCプログラムに似たものが実施されるため、Microsoftは世界的に、もっと競争力のある価格設定を迫られるだろう」と、Wigginsは締めくくった。
同氏は、来年半ばまでに、開発途上国におけるMicrosoft製品の価格が少なくとも50%は下がると予想している。
なお、同氏の見解は、同僚のアナリストMartin Gillilandとの共著による「Thai PC Market May Change Global Windows Landscape(タイのPC市場が世界のWindows市場を変えるか)」と題する論評のなかで発表された。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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