IBMは29日(米国時間)、同社のBlue Gene/Lの拡張バージョンがスーパーコンピュータのスピード競争でNECのマシンに勝利し、首位に立ったと宣言した。しかし、Silicon Graphics(SGI)製の新しいマシンなどが、はやくもIBMの王座を脅かそうとしている。
ミネソタ州ロチェスターのBlue Gene/L生産施設で働く研究者らは、このマシンを1秒間に36.1テラフロップ(36兆1000億回)という速度で一定時間動かすことに成功した。これに対し、2002年以来世界最速スーパーコンピュータ上位500リストのトップの君臨しているがNECの地球シミュレータで、その速度は35.9テラフロップを誇る。
「米国のスーパーコンピュータ産業は今も健在だ」とIBMのDeep Computing担当バイスプレジデント、Dave Turekは29日に行われた電話会議のなかで語った。IBMはローレンス・リバモア国立研究所の核兵器研究所用としてBlue Gene/Lを構築しているが、すでに他の顧客へもこのシステムを販売し始めている。
IBMが世界最速スパコンの記録を塗り替えることは、以前から予想されていた。2つのBlue Gene/Lマシンが上位500リストにランクインしたとき、Turekは11月に発表される次回のランキングではBlue Gene/Lが首位に立つ「可能性がかなりある」とし、「道筋ははっきりしている」と述べていた。
しかし、同社に挑む新たなライバルがすでに姿を見せつつある。NASAの「Columbia」というシステムは、合計1万240基のIntel Itaniumプロセッサを搭載予定で、現在SGIが構築を進めているところだ。Intel社長のPaul Otelliniは今月、このシステムが年内に完成する予定で、60テラフロップという高性能なものになることを明らかにした。
さらに、米バージニア工科大学のシステムも上位進出を狙っている。同大学は2003年、デュアル2GHzプロセッサ搭載のApple Power Mac G5を1100台使ってスパコンを構築し、第3位にランクインした実績がある。同大学の広報担当、Lynn Nystromによると、よりスリムなApple Xserveコンピュータを同数使用したアップグレードバージョンもすでに完成しているという。
「目標は(上位500位の)トップ10に留まること、そして大学が利用するコンピュータのなかで最速となることだ」とNystromは述べている。Appleが現在販売中のXserveは2GHzプロセッサのモデルのみだが、バージニア工科大の新しいシステムでは2.3GHzのチップが使用されている、とNystromは述べた。
だが、ローレンス・リバモア研究所のフラッグシップマシンとなるBlue Gene/Lは、2004年中の完成という当初の締め切りに間に合いそうもない。「リバモア研究所への完全な納品はだいたい2005年5月頃になる。未知の領域にはまり込んでしまうという問題は、スケーラブルなシステムを構築しているところならどこでも直面するものだ」(Turek)
IBMがリバモア研究所用に構築中の、64ラック構成のBlue Gene/Lは、同社が手がけたなかでも最大規模のシステムだが、同社ではこのほか6ラック構成のシステムをオランダの電波望遠鏡プロジェクトに、またアルゴンヌ国立研究所には1ラックのシステムを、さらに日本の産業技術総合研究所には4ラックのシステムを販売している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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