日本の研究所がたんぱく質の構造を調査するため、IBMからBlue Gene/Lスーパーコンピュータを購入した。そもそもIBMがBlue Geneの開発を始めたのも、たんぱく質の構造調査が目的だった。
日本の独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)がIBMから購入した新型スーパーコンピュータBlue Gene/Lは1秒間に17兆2000億回の演算が行えるとされる。AISTの生命情報科学研究センター(CBRC)は、DNAの中の遺伝情報がどのようにして、たんぱく質の複雑な立体構造内に折りたたまれる一連の構成要素となるのかを物理シミュレーションを使って調査する。
IBMが5年前にBlue Geneプログラムを開始した当初の目的は、このプロテインフォールディング問題の解明にあった。プロテインフォールディングは生物化学を理解する上で重要であり、またコンピュータを使った薬剤設計でも重要である。
IBMが販売したスーパーコンピュータとしては通算4台目となるAISTのシステムは、4台のラックから構成され、スーパーコンピュータとしては比較的小規模なものになっている。同社はこれまでに、大規模な64ラック構成システムをローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)に、6ラック構成システムをのAstronという組織が運営する新電波望遠鏡プロジェクトに、さらに1ラック構成システムをアルゴンヌ国立研究所にそれぞれ販売した。
スーパーコンピュータ業界におけるBlue Geneプログラムの知名度は高まりつつある。世界最速スーパーコンピュータ上位500リストの上位10機にBlue Gene/Lシステムが2機種もランクインした。
IBM Researchのサーバシステム調査担当ディレクターWilliam Pulleyblankによると、同社はこれまでに販売してきた4種類のBlue Geneシステムのほかに、20ラック構成のBlue Gene/Lシステムを開発中だという。この開発は、ニューヨーク州ヨークタウン・ハイツにあるThomas J. Watson Research Centerで行われている。さらに、米国最大級の医療機関であるMayo Clinicは、ミネソタ州ロチェスターのIBMの施設内にある別のBlue Gene/Lの処理能力を利用している。
Blue Gene/Lの開発は今や研究段階を脱し始めている。Pulleyblankによると、名は明らかにしなかったがIBMのSystems Groupのある幹部が、顧客が購入可能な製品版Blue Gene/Lシステムの開発を担当しているという。
「われわれはすでに販売してきたBlue Geneシステムの商品化に取り組んでいる」とPulleyblankは語る。IBMはすでに、ロチェスターにBlue Gene/Lシステムの量産施設を所有している。
Pulleyblankによると、Blue Gene/Lの後継機の開発も順調に進んでいるという。この後継機の発売は、Blue Gene/Lが正式に発売される2005年初頭からさらに2年後を予定しているという。後継機には単により高速なプロセッサが搭載されるだけでなく、より根本的な変更がなされるが、Pulleyblankはこの後継機を「Blue Gene/Lプラットフォームを進化させたもの」と説明している。
またIBMはBlue Gene/CやBlue Gene/Pと呼ばれる別のシステムの設計にも取り組んでいる。Blue Gene/Pは、処理速度が1ペタフロップ(毎秒1000兆回の浮動小数点演算を実行)に達するよう設計されている。現在LLNLで開発されているBlue Gene/Lは、1ペタフロップの30%に当たる300テラフロップ(毎秒300兆回の浮動小数点演算を実行)の処理速度が見込まれている。
Blue Gene/LシステムはLinux OSを搭載し、プロセッサにはIBM製のPowerシリーズが使用される。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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