EMCジャパンは5月11日、データのバックアップにおいて主流となっているテープバックアップに代わる製品として、ディスクバックアップ製品のEMC CLARiX Disk Library(CLARiX DL)の販売を開始すると発表した。これにより、テープバックアップで課題となっていた、リカバリの際の時間短縮や可用性の向上が実現するという。
ディスクライブラリと同様の高速性や信頼性は、Backup-to-Disk(B2D)というディスクへのバックアップ方法でも実現できる。実際、全世界で2003年にEMCが販売したストレージシステムCLARiX ATAのうち65%はB2Dの目的で利用されているという。
ただB2Dでは、既存のプロセスでバックアップすることができないため、テープ装置からディスクに移行する際にはプロセスの変更が必要だ。CLARiX DLは、「ディスクを利用するため、B2Dの性能と可用性を実現できる。また、エミュレーションによりディスクをテープとして認識する仕組みになっているためプロセスの変更も不要」と、EMCジャパン マーケティング本部プログラム・マネージメント部プログラム・マネージャーの雨堤政昭氏は説明する。テープとB2Dの両方の利点を組み合わせたものがディスクライブラリというわけだ。
EMCジャパン マーケティング本部プログラム・マネージメント部プログラム・マネージャー 雨堤政昭氏 |
バックアップといえばテープライブラリの普及率が高いが、テープではスループットに限界があるほか、データへのランダムアクセスができない、複数要求の処理が非効率的、RAIDのようなデータ保護をサポートしていない、一定回数使用すると使用不可となるなど、さまざまな制限があった。しかし多くの企業では運用変更のわずらわしさなどの理由からいまだテープを使いつづけているケースが多いため、EMCではこのような企業をターゲットにCLARiX DLを売りこんでいく考えだ。日本国内におけるテープバックアップ装置およびメディアの市場は約500億円と推定されており、EMCジャパンではCLARiX DLで10%のシェア獲得を目指す。
導入コストはテープより約30%割高になるとのことだが、雨堤氏は「テープの劣化などで買い替えが必要となることを考えると、3年程度でコストの曲線が一致、あるいは逆転することがある」と述べている。
今回提供されるのは、CLARiX DL700とCLARiX DL300。DL700は同社のストレージシステムであるCLARiX CX700をベースに作られており、最高58テラバイト(圧縮技術を使用すると174テラバイト)のストレージ容量を備えている。一方、DL300の容量は、最高12.5テラバイト(圧縮技術使用時は37.5テラバイト)となっている。両製品とも、最高80Mbpsという高速性を発揮し、テープよりも約30%〜60%速いバックアップ処理と約90%速いリストア処理が可能だという。
ディスクライブラリでのバックアップ手法は近ごろ徐々に注目されつつあり、国内でも日商エレクトロニクスが数年前よりVTLA(仮想テープライブラリ)というソリューションを提供しているほか、東京エレクトロンも米ADICのPathlight VXというディスクライブラリ製品を今年1月より取り扱っている。ADICは、2003年度のテープ装置の世界シェアで66%(Gartner Dataquest調べ)と、テープメーカーではトップの企業だ。
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