Stretchという米の新興チップメーカーが、高性能ハードウェアの世界で革命を起こそうとしている。
同社は26日(米国時間)、稼働中に新しい命令を追加できる史上初めてのプロセッサ「S5000」を発表した。このチップは既存のRISC(Reduced Instruction Set Computing)アーキテクチャと、Instruction Set Extension Fabric(ISEF)と呼ばれる大規模なプログラマブルロジック(リコンフィギュアブルLSI)を組み合わせたもの。Stretch独自のC/C++コンパイラは、プログラム中で重点的な計算が必要な箇所を自動検出し、プロセッサがそのタスクを処理するための新たな命令を生成するという。
「何百、何千もの標準命令が必要となっていた処理が、1つの命令で扱えるようになる」とStretchの最高経営責任者(CEO)Gary Bantaは述べている。「今まで設計者は、複数のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)チップを使ったり、汎用プロセッサに専用プログラマブルロジックチップを組み合わせたりしなければならなかった。しかしS5000では、高級言語でプログラムを記述するだけで同等の性能を得られる」(Banta)
S5000では、データブロック上での暗号化やデジタルビデオ処理といった通常のタスクなら、たった1回のクロックサイクルで実行できるようになる。
Bantaによると、このチップはすでに300MHzのクロックスピードで動作することが確認されているが、この場合の処理能力は従来の2GHzで動作するプロセッサの性能を上回るという。
このチップは専用回路を使わないチップ設計のおかげで、これまで数百万ドルかかっていた製品開発コストを数万ドル台まで削減できるうえ、開発時間も1年以上から数週間に短縮できるとBantaは言う。
「S5000を使えば、製品開発にかかる時間と費用を大幅に削減できる。また、大幅な機能の変更もソフトウェアのアップデートで実装可能だ」(Banta)
ISEFはチップ内部で32個の128ビットレジスタを持っており、それ以外の回路とは128ビットのバスで接続されている。ISEFはプロセッサの他の部分とパラレルで動作し、完全にリコンフィギュラブルなコプロセッサとして機能する。また、稼働中いつでも、新たな命令用にプログラムし直すことが可能だ。
Stretchは、MicrosoftのWindows XPもしくはLinuxで動作する開発環境を提供しているほか、Stretch独自のBIOS(基本入出力システム)およびMontaVista Linuxをランタイムサポートしている。MontaVista Linuxは組み込みシステム開発者に人気のあるディストリビューションだ。
このプロセッサは当初ビデオ、ネットワーク、通信、医療、セキュリティ用のアプリケーション向けとして、2004年中に複数の構成で発売になる予定。価格は大量購入の場合で35〜100ドルとなる見込み。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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