SAS Institute Japanは4月7日、先週出荷を開始したSAS 9についての概要説明会を行った。SAS史上最大となる2000億円以上を投資し、開発期間3年以上をかけて開発を行ってきた同製品は「BIを超えるものだ」と、同社執行役員営業本部BI Platform & EPM営業開発部統括部長の桐井健之氏はいう。
同社では、データからインテリジェンスが生まれるまでのすべてのフェーズをサポートするIntelligence Value Chainというコンセプトを提唱しているが、SAS 9は「計画」「ETL(データの抽出、加工、ロード)」「インテリジェントストレージ」「ビジネスインテリジェンス」「アナリティックインテリジェンス」の各フェーズをすべてカバーする製品群を用意している。
SAS執行役員の桐井健之氏 |
計画フェーズでは、SASの業界ノウハウを集積したものをテンプレートとして提供する。現在保険業界に向けた論理データモデルを用意しているというが、「SASにはさまざまな業種のノウハウが集積されているため、今後はさらに対応業種を増やしていく」(桐井氏)としている。ETLのフェーズに向けては、データハウスにおけるETLプロセスの構築・管理を支援するためのSAS ETL Serverを用意した。これまでETLプロセスに関しては多くのツールを併用する必要があったが、今回ひとつのパッケージにまとめてETL製品としたのだという。
インテリジェントストレージとは、ビジネスインテリジェンスの前提となるデータストレージが最適化されたものだ。このようなストレージを実現するために、SASではIntelligence Storageという管理ツールを提供する。また、ビジネスインテリジェンスのフェーズでは、データアクセスや分析、レポーティングなどのユーザーインターフェースを統合したBI Serverを提供する。そしてインテリジェンスに到達するための最終段階であるアナリティックインテリジェンスでは、将来の予測や判断に役立つ統計・解析パッケージであるAnalytics Toolsが用意されている。
さらにSAS 9は、運用管理性、スケーラビリティ、相互運用性、操作性の4つを強化すべく開発されたという。運用管理性は、メタデータを核とした集中管理や、環境を一括管理できるSAS管理コンソールで実現し、スケーラビリティはマルチスレッド処理のできるサーバアーキテクチャで対応する。相互運用性を高めるために、JavaやXMLサポートの強化、.NET、Microsoft Officeのサポートに加え、業界標準のメタデータもサポートした。また、操作性に関しては、さまざまなユーザーに合わせたインターフェースを用意し、パワーユーザーのみならず一般ユーザーでも使いやすいフォーマットを提供しているという。
桐井氏によると、3月31日に出荷開始されたSAS 9は、サポート体制が完備するまでは限定出荷となり、本年度中は約20ユーザーを対象に導入していく。4月6日にはUFJグループがSAS 9の導入を発表したばかりだ。限定出荷の理由について桐井氏は、「ツールだけの提供ではなく、サービスと一緒に採用してもらったうえでSAS 9のよさを理解してもらいたいためだ。顧客とじっくり相談したうえで真のBIを実現し、本当の意味での成功事例を作り上げていきたい」と語った。
なお、同社では今後SAS 9プラットフォームのソリューションを充実させるとしている。2004年秋以降に、マーケティング支援のCRMソリューションMarketing Automation、財務分析ソリューションであるFinancial Management Solutions、経営戦略達成を支援するStrategic Performance Managementなどを順次提供していく予定だ。
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