「コンピューティングと通信の融合、これがユビキタス時代におけるインテルのビジョンだ。つまり、すべてのコンピューティング機器が通信を行い、すべての通信機器がコンピューティングを行うことになる。そしてこれはすでに現実化しつつあるのだ」。インテル代表取締役共同社長の吉田和正氏は12月1日、モバイル・インターネットキャピタル主催のユビキタス・コンピューティングセミナーにて基調講演を行い、このように語った。
吉田氏は、2003年がインテルにとってコンピューティングと通信の融合が始まった年だと語る。それは、2月23日に同社が発表した業界初のシングルチップ携帯向けプロセッサ、「PXA800Fセルラ・プロセッサ」で、コンピューティング、メモリ、通信機能を集積させたことや、3月12日に国内で正式発表された「Centrino」で、CPU、チップセット、無線LAN機能を組み合わせたモバイルコンピューティング環境を実現させたことによるもの。同氏は、無線LAN搭載ルータの出荷数やブロードバンド加入者数の増加、さらには現在すでに日本において人口の3分の2にまで浸透している携帯電話契約者数の世界的な広がりなど、通信事情が進展している状況下において、「インテルでは今後もワイヤレス環境を進化させるための投資を拡大させる」としている。
現在の無線技術は、それぞれが単一の機能のみを果たしており、例えば無線LANからPHS通信に切り替えたい場合、ユーザーが手動で切り替えを行っているが、今後実現されることとして吉田氏は具体的に、「2005年頃にはCMOSに複数の無線技術が統合されるようになり、状況に合わせて自動的に通信方法を切り替えることが可能となる。また将来的には、ひとつのベースバンド回路で複数の無線技術に対応することが可能となるだろう」と語る。
インテル社内のTCO削減法とは?
インテル代表取締役共同社長の吉田和正氏 | |
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吉田氏はまた、インテル社内におけるIT環境についても詳細を説明した。同社では、全世界で3万5000台のデスクトップPC、6万5000台のノートPC、1万台のPDAを採用し、800種以上の業務アプリケーションを利用している。ノートPCの台数がデスクトップを上回るのは、トップの判断と全社的な取り組みによるTCO削減プランによるもの。ノートPCは、デスクトップに比べるとハードウェア自体のコストはかかるが、効率性・生産性に優れており、投資金額をすぐに回収できるものだという。実際にハードウェアのコストは、安価なものを採用したからといって低減するわけではなく、1995年に取り組みを開始したTCO削減プランで大きく削減されたのは、エンドユーザーの費やす時間やサポートにかかる時間だったと吉田氏はいう。
ほかにもTCO削減プランで同社が実行したのは、標準化や自動化を推進すること。同社では、1995年には複数メーカーのPCを利用していたが、現在では1メーカーのものに絞って利用している。さらにOSも、1995年にはWindows 3.0、Windows for Workgroups 3.x、Windows 95、Windows NT 4.0など複数世代のOSを利用していたが、現在は原則としてWindows 2000とWindows XPの2世代OSに限っているのだという。吉田氏は「ハードウェアとソフトウェアを標準化することで、購入コスト、サポートコスト、人員、時間のすべてを削減できる」と述べ、同社が1995年から1998年の3年間でTCOの53%削減に成功した実績を説明した。
さらに吉田氏は、インテル社内におけるモバイルコンピューティングへの取り組みについても述べた。同社の日本法人では社員の95%がすでにノートPCのユーザーであり、2000年にはPHSサービスを導入開始、2002年にはVPNへと移行、2003年には無線LANを全面的に導入したという。その結果同社のコスト削減は、「ユーザーが800人とした場合、3年間での投資金額は40万ドル、削減できたコストは500万ドルという計算になる」とした。
このように、インテルを含め多くの企業がすでに無線LANやモバイルコンピューティングの導入で恩恵を受けていることを吉田氏は指摘、ユビキタス時代に向けてさらに環境整備が進むだろうとした。その環境整備に貢献するのが同社であり、吉田氏は「インテルでは今後もさらにユビキタス社会に向けたモバイルコンピューティング分野の研究開発を進めていく」と述べて講演を締めくくった。
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