サンフランシスコ発−今週開催されたOracleWorldカンファレンスでは、グリッドコンピューティングが新技術としてのライフサイクルの全過程を一気にひとまわりしたように見えた。目を見張るような発展から地味な再評価までが、僅か4日の間に見られたのである。
最終日の11日(米国時間)、米Hewlett-Packard(HP)の最高経営責任者(CEO)Carly Fiorinaは講演の中で、グリッドコンピューティングは前途有望であるが、過剰に露出され、誤解を受ける危険があると語った。「グリッドコンピューティングは、実際以上にもてはやされている」(Fiorina)
非常に派手に宣伝されているこの技術は、今週のOracleWorldのテーマであった。それは、数百のサーバの持つ計算能力をネットワークを使ってひとつにまとめることで、プログラムをより確実に動かし、データセンターの維持費を軽減させるものだ。
Fiorinaは、一般のビジネスユーザー向けにグリッドコンピューティングのもたらすビジョンを紹介する前に、やるべきことがたくさんあり、技術標準策定に関する調整を行うなどの作業が残っていると述べた。Fiorinaの予想では、企業がグリッドコンピューティングを賃金計算などの業務用システムの基盤として使うようになるには、あと3年から5年はかかるという。
Fiorinaはまた、グリッドコンピューティングと分散コンピューティングを明確に区別しようとし、後者は20年以上前からある概念だといった。また、グリッドコンピューティングは、米Oracleの開発したひとつのサーバの故障に備えるために複数のサーバをつなぐ技術、Real Application Clusteringよりも先を行く技術だとも述べた。
グリッドコンピューティングのもてはやされ過ぎを嘆いているのは、Fiorinaだけではない。Oracleの最高経営責任者(CEO)Larry Ellisonが9日に行った基調講演を聞いていた、あるOracleの顧客は、グリッドコンピューティングに注目が集まるのは「来年、Larry Ellisonが何かほかのものを思いつくまでの間だ」と言った。
Oracleやその他の企業では、グリッドコンピューティングは今までの技術とは違う、なぜならば、給与計算や受発注処理を扱う業務用プログラムが処理能力を共有できるようにするからだ、と主張している。いまのところ、大半の業務用システムには、プログラムごとに専用のコンピュータが必要で、そうしたマシンが連携もとれないまま点在している状態だ。また、各プログラムは、常にピーク時のデータ処理にかかる負荷を想定し、それに合わせて設定された専用マシン一式を必要としている。
HPは、グリッドを機能させる特別なストレージシステム、システム管理ツール、コンサルティングサービス、さらには家電製品などを、同社がこれから市場に登場させていく際に、グリッドコンピューティングが売り上げにつながることを期待している、とFiorinaは述べた。また、グリッドコンピューティングの概念は、IBMの「ユーティリティコンピューティング」に対抗してHPが提唱している「アダプティブエンタープライズ」という新たな取り組みを支えるものだ。小難しい呼び名の違いを別にすれば、この3つのコンセプトはどれも同じで、要は企業内の使われていない計算リソースの削減を狙いとしているように見える。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」