「マイクロソフトより先だった」-SCOと密かに契約していたサン

 Linuxに自社の知的所有権が含まれるUnixコードを不正流用されたなどと主張し、また米IBMをライセンス契約違反で訴えている米SCO Groupだが,そんな同社と、これまで名の挙がっていなかった企業がライセンス契約を結んでいたことが分かった。Unixサーバ市場で首位を誇る米Sun Microsystemsである。

 SCOが今年5月に発表したUnixのライセンスプランは、米MicrosoftがSCOとのライセンス契約を発表したことで、広く知れ渡った。しかし実際にはSunの方がMicrosoftよりも早く話を進めていた。

 SunとSCOが署名を交わしたのは、MicrosoftとSCOの契約よりもずっと前のことだった。そしてこの7月9日、両社は最終承認に達したのだ。これにより、Sunは1994年に獲得した権利を、自社オペレーティングシステムのSolarisに拡大することができる。ただし、両社が結んだ契約内容はこれだけではない。SCOの提出書類によると、SCOは、Sunが21万株のSCO株を1株当たり1ドル83セントで買い取る権利を保証したという。

 このライセンスの拡大により、SunはUnix System V Release 4のソフトウェアの一部を、ドライバと呼ばれるソフトウェアコンポーネントに使用することができる。Sun広報担当者のBrett Smithは、「このソフトウェアは、Intelサーバで稼動するSolarisに必要だった」と語る。

 関係者筋によると、両社は2月には契約の署名を終えていたという。しかし、SunとSCOのいずれもがこれまで口を割らなかった。Sunは、SCO株式の買収についてもコメントを控えている。

 SCOは自社Unix製品の販売が芳しくなく、またLinux製品からはすでに手を引いている。それゆえに、Unixの知的所有権で利益を見出そうとやっきになっており、その最たるものがIBMの提訴である。同社は現在、IBMがSCOの企業秘密を不正流用し、Unixライセンス契約に違反したとして、30億ドルを超える損害賠償を求めている。

 今回のSunの動きは、「漁夫の利」を狙ったものといえる。SCOがIBMを訴えた当日、Sunはこれを逆手に取り、訴訟ついて懸念を抱くユーザーに対し、「SorarisとSunのLinux製品は安泰だ」とアピールしている。

 Smithは、「Sunは常にUnixの知的所有権に関して気を配っており、清廉潔白であると確信している」と語る。今回の契約を結ぶ前にも、「Unixの使用権限を8200万ドルで購入した」(Smith)。SCOはこれについて、「Sunが持つ特権の1つに、Solarisの基本ソースコードを顧客に開示できる権利を持っていることがある」と語っている。

 ただし、SunのLinux戦略に大きく変わった点がある。最初のLinuxシステムは自社バージョンのOSを搭載していたが、3月末には米Red Hatなどのベンダーと提携する道を選んだ。Smithはこの点について、「SunのUnixライセンスによる法的保護が、他社バージョンのLinuxにも適用するか不明だ」と語っている。

 SCOは、SunおよびMicrosoftとのライセンス契約条件についてコメントを控えているが、5月には「これらのライセンス契約による2003会計年度第2四半期の売上高は830万ドルに達した」と語っている。「今後3四半期のあいだに500万ドルの収入が見込まれるため、2つのライセンス契約による売上高は合計1330万ドルとなる」(SCO)。

 また、同社が提出した書類によると、Microsoftにはライセンス契約を拡大する選択権があるため、場合によってはSCOにさらなる収入が舞い込むことになる。

 ただし、SCOのスポークスマンのBlake Stowellは「SunはIBMや米Hewlett-Packard(HP)などのUnixライセンシーと比べて、はるかに広範囲の権限を持つが、UnixソースコードとUnixに加えた変更を、オープンソース・ソフトウェアとして開示する権限はない」と釘をさしている。これは、SCOがIBMを訴える理由となった「IBMは、Unix系のAIX向けに開発したコードを、オープンソースのLinuxプロジェクトに取り入れた」点を踏まえた発言だ。

 SCOは「UnixコードがLinuxに不正利用された」と訴えているものの、同社はこれまで著作権侵害に関する訴えは起こしていない。知的所有権担当の弁護士によると、「SCOが著作権侵害を訴えるには、まず著作権を米著作権局に登録しておく必要がある」という。

 SCOにUnix関連の権利の大半を売却した米Novellは、当初「Unixの著作権は我々にある」としていたものの、後ほどこれを取り下げ、「SCOは少なくとも一部の著作権を持つ」と認めている。NovellはLinuxをはじめとするオープンソース・ソフトウェアの採用を進めているが、SCOへのUnix著作権委譲に合意するかどうかについては、コメントを控えている。

 しかし、SCOは「著作権委譲の手続きを行っており、数カ月ほど時間がかかる」と語る。「現在、米著作権局での登録手続きを進めている。6カ月以内には手続きが完了し、Unixの著作権を取得する見込みだ」(SCO)

 なお、SCOは規制当局に提出した書類で、SCO株の購入を検討している投資家に対して、いくつかのリスクを警告している。 「Unixライセンスから収入を拡大するSCOsource戦略は、安定かつ予測可能な売上高にはつながらないかもしれない」(SCO)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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