SCOがUnixのライセンス契約にIBMが違反していると提訴してから4カ月が経過した。この訴訟がLinuxの発展に与える影響が大きく議論されているが、そんな中、SCO社長兼CEOのDarl McBride氏が来日し、IBM提訴の真の狙いを明らかにした。
かつてノベル日本法人の立ち上げに携わり、3年間日本で過ごしたことのあるというMcBride氏は、時折日本語を交えながら、日本のパートナー企業に対して同社の持つUnixの権利と、IBMの訴訟に至った経緯について熱心に説明するとともに、この問題の解決策を提示した。
まずMcBride氏は1990年代に2億5000万ドルほどあったSCOの売上が、現在は6000万ドル程度にまで落ち込んでいると指摘する。McBride氏は昨年夏にSCOの社長に就任して以来、この売上減少の原因を探ったという。そして行き着いたのが、Unixの権利をLinuxベンダーが侵害しているという結論だ。
SCO社長兼CEOの Darl McBride氏 | |
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UnixはもともとAT&Tのベル研究所で開発されたものだが、1993年にNovellがUnixの権利を取得し、さらに1995年、SCOがUnixの知的財産権をNovellから取得している。
SCOの調査の結果、IBMが同社のUnixであるAIXに含まれるソースコードをLinuxコミュニティに提供したことが分かったとMcBride氏は説明する。これがUnixのライセンス契約違反であるとして、SCOは2003年3月に総額10億ドル以上の損害賠償を求める裁判を起こし、6月にはこの金額を30億ドル以上に引き上げている。
SCOの要求は損害に対する“見返り”
McBride氏がこの問題の解決策としてあげたのは2つ。「LinuxにコピーされたUnixコードはそのままにしておいて、代わりに“見返り”を損害賠償という形でSCOが受け取るか、Unixのコードが移植される前のLinux 2.2の段階まで戻すかだ」(McBride氏)。LinuxにコピーされたUnixのコード量は膨大で、簡単に直せるようなものではないとMcBride氏は指摘する。また、Linux 2.2ではハイエンドサーバーに利用するのは難しく、2.2に戻ることはSCOの望むところではないとMcBride氏は語り、選択肢は賠償金をSCOに払う以外にないという考えを示した。
McBride氏はUnixを1本の木に例え、「幹の部分はSCOが権利を持っている。IBMのAIXなどの様々な派生物はいわば枝の部分だ。その側に若いLinuxという木が育ち始めている。しかし、Unixの木から枝を切ってLinuxに接木をするのは契約違反だ」(McBride氏)
McBride氏によると、「かなり大量のソースコードがLinuxに移植されている」という。IBMがLinux 2.5に移植したUnixのソースコードの例としては、NUMA(Non-Uniform Memory Access)、RCU(Read-Copy Update)、JFS(Journaled File System)、SMPなどがあるという。
SCOが問題にしているのはバージョン2.4以降のLinuxで、2.2以前に大きな問題はないとMcBride氏は説明する。2.4以降、ハイエンドサーバでLinuxが利用できるようにするために、IBMを始めとした多くのベンダーがLinuxにUnixのコードを移植したというのだ。
来日の目的は?
ただしMcBride氏は、「訴訟に勝つことがSCOの最終目標ではない」とも語る。LinuxコミュニティやベンダーとWin-Winの関係を築けるように、この問題に関して解決策を見出すことがSCOの目標だというのだ。今回の来日も日本のベンダーと話し合いを行い、「より良い解決策を見つけることが目的」とMcBride氏は説明している。話し合いを行う企業の名前は明かさなかったが、「エンタープライズ向けLinuxを扱う大手ベンダー」(McBride氏)だとした。
McBride氏によると、米国では現在Microsoft、Sun Microsystemsの2社とは合意が得られており、「安心して利用してもらえる」(McBride氏)という。また、Hewlett-Packardとは現在話し合いが続いていることも明らかにした。
組み込みLinuxにもIBMが移植したコードが見つかれば訴訟の対象になるのか、という点に関しては「調査してみないとわからない」と慎重な姿勢を見せている。「SCOはずっとサーバビジネスを行ってきたので、現在エンタープライズ向けLinuxを非常に問題視している」とMcBride氏は述べるにとどめた。
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