米CNET編集者注:この記事は、Mobifyの最高経営責任者(CEO)のIgor Falestki氏がゲストとして寄稿したものだ。記事の最後にFalestki氏の略歴を記載した。
新しい「iPad」は、3月16日に発売されて以来、飛ぶように売れている。現在、300万人を超える人々がこのつややかな新しいデバイスを手にしている。
何らかの理由でその刺激的な宣伝を見逃した人のために説明すると、新しいiPadは「Retina Display」を採用したことでスクリーンの解像度が飛躍的に向上した。「iPad 2」の4倍(HDテレビの100万倍)のピクセル数を詰め込んだRetina Displayは、信じられないようなビジュアル体験をエンドユーザーに提供する。
しかし、消費者にとっては非常にシンプルに思えるテクノロジでも、ウェブサイトオーナーにとっては新たな頭痛の種になる可能性がある。Retina Displayの精密な画像レンダリング機能により、ウェブ上でざらつきが目立つようになる。テキストは非常にシャープかもしれないが、そのテキストを写真と並べて配置すると、画像が見劣りする。ロゴは不鮮明に思える。ショッピングカートのボタンでさえ、きめの粗さが目に付くようになる。
ウェブデザイナーのDave Shea氏は「iPadのRetina Displayは、既存のあらゆるグラフィックを、荒いピクセルで描いたクリップアートのように見せてしまうだろう」と述べる。つまり、新しいiPad向けにウェブサイトを拡張する必要があるということだが、果たしてそうするだけの価値があるのだろうか。
ブランドやEコマースサイトにとっては、新しいiPadに対応するためのコストが高くなりすぎるかもしれない。これは特に、The New York TimesのBitsブログの記事で指摘されているように、新しいiPadは、「それほど『革命的』ではないスクリーンを備えた多くのコンピュータ、スマートフォン、タブレットにならぶ、1つのデバイスにすぎない」からである。
しかし、ブランドとしては、Eコマースにおけるタブレットの力を過小評価することはできない。iPadなどのタブレットを利用して買い物をする消費者が増えているためだ。こうしたインタラクティブなデバイスは、スマートフォンやコンピュータでは実現できない、より豊かなショッピング体験を提供する。2011年の米オンライン出版協会による調査では、タブレット所有者のうち、オンラインショッピングの際にタブレットを使うのを好むと答えた人の割合が52%に達したのに対し、従来のコンピュータによるショッピングを好むと答えた人の割合は40%にすぎなかった。
小売業者にとって、タブレットは顧客との重要な接点であり、新しいiPadはビジュアル体験を新たな高みへと引き上げるものだ。タブレットを使う消費者が利益の上がる顧客セグメントであり、デスクトップコンピュータを使う買い物客と比較して1回あたりの購入金額が20%以上高いことは、タブレットでの体験を最適化する動機付けの1つとなっている。
消費者層の内訳に加えて、タブレットの普及率がホッケースティック型に急成長するだろうという印象的な予想も明らかになっている。iPadは2011年12月に5500万台販売されており、Forresterの予測によると、米国では2016年までに、タブレットの保有者が1億1250万人(米国の成人人口の約3分の1)に達するという。
2010年以降、新たな競争相手が市場に参入してきたものの、2012年のタブレット市場におけるAppleのシェアは62%と予想されている。ほかのベンダーはiPadの進歩にまだ追いついていない状況だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」