米プロフットボールリーグNFLのチャンピオンを決める「Super Bowl」が米国時間5日に開催されるが、スポーツ専門チャネルのESPNはこれに合わせて待望の携帯電話サービスを開始する。これにより、ユーザーは携帯電話の小さな画面で、スポーツトークショーの「Pardon the Interruption」やESPNのニュース速報などの番組を観られるようになる。
このサービスでは、ゲームの進展にあわせて最新のビデオコンテンツが1日中配信され、また試合が終了するとハイライト映像が素速く提供されることになっている。
スポーツファンは、携帯電話からスポーツニュース番組「SportsCenter」が観られると聞いて胸を躍らせているかもしれない。だが、最近ではESPNのファン以外にも、有名ブランドの名前が入った携帯電話を利用するようになっている。
消費者向けにビジネスを展開する大手企業が、自社のブランドを利用して携帯電話サービスに乗り出すケースが増えてきているが、新たに開始される「Mobile ESPN」サービスもそうした流れの一部といえる。これらの企業は主に大手電話会社の手の行き届かないようなニッチ市場に狙いを定めている。ESPN Mobileのようなサービスは、携帯電話業界で「MVNO:mobile virtual network operator(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれているもので、自前の基地局や通信網を保有せず、Sprint Nextelなどの無線通信事業者から回線を借りてサービスを提供する。
「われわれの使命は、あらゆるプラットフォームでスポーツファンにサービスを提供することだ」とMobile ESPNのManish Jha(シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー)は言う。「われわれは数年前、携帯電話業界が非常に断片化していることに気づいた。携帯電話事業者は、17種類の異なるグループに属する人々にサービスを提供しようとしているが、限られた効果しか挙げていない」(Jha)
アナリストらは、MVNO各社が携帯電話業界のなかで一大勢力になると予想している。Yankee Groupによると、MVNOの昨年の売上は19億ドルであったが、2010年にはこれが110億ドルにまで増加するという。また、現在2億人いる米国の携帯電話利用者のうちMVNO加入者は約1400万人にすぎないが、2010年にはこれが2900万人まで増加するとみられている。
ただし、携帯電話サービスに参入することがどの企業にとっても最善策であるとは限らないという点で専門家の意見は一致している。
「Scotchや3Mなどのよく知られた企業でも、必ずしも自社ブランドの携帯電話サービスを必要とするわけではない」と電気通信業界を専門とする調査会社Atlantic-ACMの戦略ディレクター、Fedor Smithは言う。「携帯電話サービスを成功させるためには、その企業が何か他にはないコンテンツかサービス、あるいは定着したクールなブランドを持っている必要がある」(Smith)
新しい携帯電話機と高速な携帯電話ネットワークが登場し、音楽や画像、動画を送れるようになったことから、ESPNなどのコンテンツ保有企業が独自の携帯電話サービスを提供するのに完璧な環境が生まれている。
Sprintのネットワークを利用するVirgin Wirelessは、米国で独自の携帯電話サービスを立ち上げた主要ブランドの1つだ。同社はVirgin Mega Storeの店舗でCDなどを購入する10代のユーザー層をターゲットに、プリペイドカードを使った通話プランを提供している。
Virginのほかにも多数のブランドが独自の携帯電話サービスプランを発表している。たとえば、Disney Mobileではファミリー向けのサービスを年内に立ち上げる予定だ。
また、EarthLinkと韓国の通信会社SK Telecomは共同で、「Helio」という10代向けの新サービスを立ち上げる。Helioと競合する「Amp'd Mobile」も流行に敏感な若者を狙っている。同サービスはVerizonのネットワークを使って提供されおり、Universal Music Groupからの資金提供も受けている。
一方、7-ElevenやCircle Kなどの小売チェーンも、独自の携帯電話サービスを立ち上げている。さらに、TargetやWal-Martもサービスの開始を検討している。独自の携帯電話ネットワークを持たないサービスプロバイダーでも、MVNOになれる可能性は高い。Sprintは昨年、Comcastなどのケーブル企業各社と協力して携帯電話サービスを立ち上げる計画を発表したからだ。
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