野村総合研究所(NRI)は29日、国内における2008年までのブロードバンド、通信、放送の各分野における市場規模とトレンドについて予測を発表した。これによると2008年度の各分野の市場規模は、DSL、FTTHをはじめとするブロードバンドが8244億円、広域イーサネット、専用線、IP-VPN、携帯電話などを含む通信市場が9兆2577億円、BS、CS、ケーブル、地上デジタルなどの放送市場が2兆843億円だという。同社にて行われた説明会では各分野の詳細について語られたが、ここではブロードバンド市場の予測について取り上げたい。
ブロードバンド市場について発表にあたったのは、NRIの情報・通信コンサルティング部副主任コンサルタントの寺田知太氏。寺田氏によると、2002年から2003年度にかけてブロードバンドは爆発的な普及を見せるものの、家庭におけるPC利用が飽和状態となることや、これまでダイヤルアップでインターネットに接続していた人たちのブロードバンド化がほぼ完了したことなどから、「市場成長は鈍化する。2003年度の加入世帯は昨年度の869万世帯から1313万世帯まで伸びるが、2000万世帯を越えるのは2007年で、2008年度の加入者世帯数は2200万世帯あたりとなるだろう」とした。
寺田氏は現在のブロードバンド市場が、成長期から成熟期へと移行しつつあることを指摘する。成長期は営業力などで顧客獲得合戦などがさかんだったが、成熟期に向けての課題として、「企業やPC非保有家庭など新たなユーザー層を開拓することや、顧客の囲い込みや乗り換えの促進を行うこと、また新たなサービスやビジネスモデルを確立して利益を生む体制を整えなくてはならない」と述べた。
NRIの情報・通信コンサルティング部副主任コンサルタントの寺田知太氏 | |
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ブロードバンドをDSL、FTTH、ケーブルインターネット、公衆無線LANの各分野別に分けた市場予測も寺田氏は発表している。まずDSL市場については、「ナローバンドユーザーがDSLに移行しきった頃に、DSLの先進ユーザーは徐々に光へと移行していくだろう」と寺田氏。特にサービスプロバイダにとって優良顧客であるARPU(Average Revenue Per User、1人あたりの平均収益)の高い顧客層ほど光へ移行するだろうと予測する寺田氏は、DSLサービスのみを提供しているYahoo! BBに対し、「いかにARPUの高い先進ユーザーを満足させ続けられるかがカギだろう」としている。
いっぽうのFTTH市場について寺田氏は、「まだ普及しきってはいないが、集合住宅を中心に市場は着実に成長している」と述べる。「現状は、有線ブロードネットワークスやケイ・オプティコムなどが開拓した集合住宅住居世帯や、一部のマニアユーザーが市場の中心となっており、この傾向は2004年ごろまで続くだろう。その後は、DSLにできない新しいアプリケーションや端末の開発を行うことで、戸建住宅を攻めることが必須だ」と寺田氏。
ケーブルインターネットについては、日本で普及したはじめてのブロードバンド通信方法でありながらも、DSLの成長と、その後に迫っているFTTHにはさまれて伸び悩んでいると寺田氏は述べている。また同氏は、事業者あたりの加入者数の伸び率も5%未満にまで減少しているため、「通信サービスで利益を上げるには規模も必要で、やはり元来のビジネスである放送分野をさらに伸ばすなど、新たな収益源の確保を検討すべきだ」と語った。
最後に寺田氏が言及したのは、公衆無線LANについてだ。これについては「まだ成功したビジネスモデルが存在しない」と厳しい意見。同氏は、一般コンシューマーにノートPCを持ち歩かせることは困難だと指摘し、「今後は主にビジネスユーザーに対し、企業ネットワークの一環として採用を促すことが大切だろう」とした。
なお、NRIの予測によると、DSL市場の2002年〜2008年度までの年平均成長率は9.8%、FTTH市場は74.6%、ケーブルインターネット市場は0.6%、公衆無線LAN市場は112.2%。2008年度の各市場規模は、DSLが3064億円、FTTHが3593億円、ケーブルインターネットが1157億円、公衆無線LANが430億円としている。
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