ソーシャルメディアの勢いは止まることをしらない。ヤフーでのファイナンシャルの掲示板からウィキペディア、そして通販サイトやグルメ情報サイトの顧客コメント、企業ブログ、ユーチューブやツイッターまで毎日の暮らしの場面に当然のように浸透し、その影響力は大きい。
もちろん、こうした動きに米国企業も対応している。フォーチュン500の米企業のうち、企業ブログは108社(22%)、ツイッターにアカウントを持っている企業は173社(35%)を数える(マサチューセッツ・ダートマス大学マーケティング調査センター「フォーチュン500とソーシャルメディア2009」)。
また、フォーチュングローバル500インデックスに採用された企業トップ100社のうち79社は、少なくともツイッターやフェイスブック、ユーチューブ、それに企業ブログといった最もポピュラーなソーシャルメディアを最低1つは利用している(バーソン・マステラ「フォーチュングローバル100/ソーシャルメディア・スタディ」)。こうした調査をみると、米国企業のソーシャルメディアに対する取り組みが見てとれる。
確かにソーシャルメディアを利用する企業は増加している。しかし、だからといって、ソーシャルメディアをIR活動に活用している企業は決して多いとはいえない。というのも、IR担当者の中には、「ソーシャルメディアは広報と営業向けのものである」とか「IRのターゲットとする相手やステークホルダーはソーシャルメディアにアクティブではない」、また「ソーシャルメディアと決算発表の間には何の関連もない」といった見方が根強いからだ。
ところが、先ごろ明らかになった2つの調査の数字をみると、そんなIR担当者の見方は根拠がないものだと判明する。1つは2010年3月、ボルティモアのマーケティング調査会社リダ―マークが明らかにした調査結果である。これによると、金融サービスに従事する50歳未満の人たちの85%はソーシャルメディアを利用し(50歳を超す人たちも50%)、40%が現在のビジネスに影響しており(同19%)、86%超が5年以内にソーシャルメディアがビジネス展開で重要な役割を占めると答えている(同50%超)。年齢の若い金融関係者ほどソーシャルメディアをビジネス関係構築の新たな手段と位置付けていると指摘している。
もう1つは、米国・欧州の機関投資家/株式アナリスト448人を対象にしたサンフランシスコのコミュニケーションコンサルタント、ブランズウィックによる調査リポート(2009年冬号)である。この調査で、彼らの58%がソーシャルメディアなどのニューメディアは自分たちの投資判断において大きな助けになっているとしている。2つの調査は、どちらもソーシャルメディアにアクセスする金融業界、市場関係者の傾向をよく示すものだった。
各ソーシャルメディアで自社に関連するキーワードをなにか検索すれば、毎日、数百万人の単位で、自社について、あるいは自社の製品、またブランドなどについて多くの意見が交わされている状況が明らかになる。そればかりではない。誰がアクティブで影響力があるのか、これも自ずと明らかになる。こうした動向をウォッチするのもIR業務の1つだといっていい。
ソーシャルメディアをどのように位置づけ、どのように活用するのか。IR担当者もソーシャルメディアの声に向き合う時代がやってきたのである。
◇ライタプロフィール
米山 徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー、埼玉学園大学教授。最近の寄稿に「米企業の79%、沈黙期間でもIR対応〜NIRIの調査から〜」(宣伝会議「広報会議」10年7月号)など。
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