スカパー、宇宙・衛星事業好調で増収増益--新規加入は落ち込むもHD移行は順調

 スカパーJSATは5月9日、2014年3月期通期の連結決算を発表した。有料多チャンネル事業における加入目標は未達となったが、HDサービスへの移行やARPU(加入者1人あたりの月間売上高)の向上により、増収増益となった。

  • 損益概要

 売上高は前年同期比7.6%増の1716億円、営業利益は同34.4%増の217億円。有料多チャンネル事業に加え、官公庁のシステム更新や国際サービス収入の増加など、宇宙・衛星事業が堅調に推移したため、両事業ともに前年度比で増益となった。

  • スカパーJSATホールディングスの代表取締役社長である高田真治氏

 ただし新規加入件数は48万件(前年は62万2000件)にとどまり、通期目標であった64万件は未達。スカパーJSATホールディングスの代表取締役社長である高田真治氏は「アグレッシブな目標を立てたが、加入実績は大変厳しい結果になった。通期では11万3000件の純減となり、これはスカパーサービスが始まって以来はじめてのこと」と加入件数についてコメントした。

 5月末にサービスを終了するMPEG-2放送については、2014年度の強制解除件数を26万5000件と見込む。高田氏は「これによって大きなコスト構造の変化が起きる」とし、2014年を変革の年と位置づけた。

  • コストの構造変革

 変革のポイントは「コスト構造改革」「ビッグデータの活用によるサービスの向上」「スカパー!オンデマンドを主要サービスへ」の3点。従来までのマーケティング戦略を抜本的に見直すほか、ICカード別に収集していた顧客データを、新顧客管理システムへと移行。3月から開始している視聴動向調査とあわせ、ユーザーのニーズをより的確に把握していくという。

 コスト構造改革により、従来までの費用配分も大きく変化する。MPEG-2放送終了に伴うH.264放送移行関連費用やセールスルート見直しなどによる顧客獲得費用の圧縮により生み出した費用を、コンテンツの強化と顧客サービスへと振り分ける。これにより今秋にはBSスカパー!の大改編を実施することも明らかにした。

 スカパー!オンデマンドについては「強い手応えを感じている。今後は衛星放送に加えた視聴形態として進め、いわゆる本業として目標数などをも定めて取り組んでいきたい」との意向を示した。2013年度末時点での登録数は27万4000会員。映像視聴におけるエブリウェア感、見逃し放送対応などオンデマンドサービス独自の商品パッケージを開発していきたいとした。

 スカパーJSATでは、6月2日に東経128度のJCSAT-3A衛星を利用した4K試験放送を開始。スカパー!プレミアムサービス光による4K展開を検討中としている。一方、2月にインドネシアで開始した日本専門チャンネル「WAKUWAKU JAPAN」を6月からミャンマーでも開始するほか、4月にはモバイル機器向け「V-High」放送にて、「スカパー!モバイルTV(仮)」チャンネルが認定された。

 こうした新しい取り組みを見据えつつ、高田氏は「2015年3月期はMPEG-2放送終了に伴うお客様の強制解除もあり、減収要因になるだろう。前年度で利益が上振れした官公庁向けのシステム案件も今年度はないため、減益要因になる」とした。これを受け2015年3月期の通期予想は、売上高1635億円(前期比4.8%減)、営業利益180億円(同17.1%減)と発表している。

 

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