Appleが、公式声明とは異なり、エンタープライズ販売部門の従業員およそ50名を解雇していたことが、CNET News.comの取材で明らかになった。
Valleywagと9 to 5 Macが、米国時間の3月3日および4日に、ある情報筋の話として「経営上および経済上の理由」によりおよそ50名の販売担当社員がAppleから解雇されたと報じていたが、複数の情報源がこの報道を事実だと認めた。なお、情報提供者たちは不利益を受けるおそれから匿名を希望している。解雇されたのは、テキサス州オースティンにある販売部門の全従業員と、Apple本社があるカリフォルニア州クパチーノの従業員らだ。解雇された従業員には退職手当が支給されるとともに、Apple社内で他の仕事に応募する機会が与えられた。
Appleで広報担当を務めるSteve Dowling氏は3日、販売部門でのレイオフに関するValleywagの記事についての質問に、コメントを拒否した。翌4日には、ある広報担当者が名前を伏せて、Silicon Alley Insiderに対して、Valleywagの記事は事実ではないと語った。さらに6日、CNET News.comが、最初の記事にあった販売部門に加え、「Mac」ハードウェア部門とプロアプリケーション部門でも50名がレイオフされたという新たなレイオフの記事についてDowling氏に尋ねたが、その短い取材でも、同じように否定が返ってきた。
そして9日、Dowling氏は前の週に出した声明以降の状況についてコメントを拒否した。
しかし、販売部門のレイオフは間違いなく行われたことが複数の情報源によって明らかになった。彼らは3日にオースティンおよびクパチーノにある会議室に呼ばれ、私服の警備員らに囲まれる中、レイオフを伝える白いマニラ封筒を手渡されたという。Macハードウェア部門で6日にレイオフが行われたかどうかは、現時点では確認がとれていない。
レイオフの種は2008年からまかれていた。この年、Appleはエンタープライズ直販部門の強化をやめ、企業に製品を売り込む手段として再販業者や販売パートナーを活用する販売戦略を採り始めたのだ。この戦略転換は、Appleの最高業務責任者(COO)であるTimothy Cook氏が直接指示したものとみられ、Appleでエンタープライズ販売担当バイスプレジデントを務めていたAl Shipp氏が同社を離れたときから始まっている。今はセキュリティ技術を扱う新興企業3VR Securityの最高経営責任者(CEO)を務めているShipp氏にコメントを求めたものの、回答は得られなかった。
Best BuyやWal-Martといった米国の再販業者でのApple製品販売を指揮していたJohn Brandon氏が、Shipp氏の去った後の販売部門を管理し、変革を開始したとみられている。Brandon氏の下で、Appleは、販売担当者が企業顧客と個人的関係を構築するという販売戦略から離れ、Ingram MicroやおそらくはCompUSAなどの再販業者の力を借りてApple製品を企業顧客に売っていくルート販売へと重点を移してきた。
この決定は、売り上げ減や販売部門の実績低下によるものではなく、Brandon氏とCook氏の方針転換によるものらしい。とはいえ、Apple社内では、エンタープライズ販売部門が注目される部門であったことなど、これまで一度もなかった。同社は一般消費者向け販売で帝国を築いたのであり、同社を率いるSteve Jobs氏は、ITに対する企業の固定した考え方につねづね冷たい視線を向けてきた人物だ。
Appleがエンタープライズ販売戦略を転換したこと自体はそれほど注目すべきことではないが、レイオフの実施を公式に認めようとしない同社の姿勢は、同社の信頼性を損なわせる新たな材料となっている。Appleは2009年に入り、6月までの医療休暇に入っているCEOの健康状態に関する情報など、その情報公開のあり方によってすでに大きく信頼を損なっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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