コンテンツ流通におけるルールづくりやコンテンツ利用に関する諸問題を検討する、総務省の諮問機関「デジタル・コンテンツ流通の促進に関する検討委員会」の第45回会合が10月14日、開催された。
同委員会では、2008年6月に第5次中間答申を取りまとめ、地上デジタル放送の著作権保護方式である「B-CAS」を見直す方針を発表。これを受け、9月末に開催された会合では「技術と契約」を軸に、B-CASの見直しが本格的に決定された。
今回の会合では、委員会主査を務める慶応義塾大学教授の村井純氏が、委員会内に設置された技術検討ワーキンググループ(WG)における議論の進捗状況を説明。現在のB-CAS方式の課題として同委員会で挙げられた
(1)カードに対する視聴者のストレス、(2)コストと効果、(3)スクランブル技術との関係性--の3点について、現行B-CASカードの対応を把握するとともに、見直すべき項目の議論や改善策の検討が進められているとした。
また、著作権保護技術として現行の仕組み以外にも、専用チップをハードウェアに内蔵する「チップ方式」と「ソフトウェア方式」が検討されているとのこと。
村井氏は「今後、責任分解点の設定や費用、コストの検討を進める必要がある。現行の仕組みで指摘されている3点に対して、それれぞれの方式がどう対応し、どう解決できるのかを議論していく」と説明した。加えて「視聴者のストレスとは何かを明確にする必要がある」とし、技術的提案と並行して具体的な調査を進める意向を明らかにした。
一方、消費者団体の代表として委員を務める主婦連合会の河村真紀子氏は「B-CASカードのストレスは確実に存在する。しかしそれは大きな問題のごく一部であって消費者が利用していくうちに次第になじんでいくものだと認識している。むしろ誰にでも透明性のある運用方法にしてほしい。放送波をスクランブルしないというのがもっともシンプルな仕組み」と発言した。
著作権団体の代表者として委員を務める実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は「B-CASを改めた後でも前の仕組みが混在するのなら『Friio(コピーフリーのデジタル放送受信機)』の問題解決にはならない」と苦言し、制度を含めた見直しの必要性を主張した。
今回の会合でもう1つ議題になったのは、デジタルコンテンツ取引市場の促進策。これに対し総務省は、2008年度から2009年度にかけて「コンテンツ取引市場形成に関する実証実験」を行い、番組製作者が製作、著作権を持つコンテンツの、包括的なデータベースの構築を進めているという。
具体的には、すでに複数の番組製作者によって構築、運用されている著作権管理データベースを相互に連携し、新たに構築されるデータベースはそれらをカタログ化して運用するという。第1段階では、データベースに登録する共通入力項目を選定し、その後コンテンツ情報を登録。データベースのプロトタイプ構築を2008年度内に実行する計画とのことだ。
この説明に対し著作権者からは、「データベースは団体や製作者を対象としていて、権利者個人の対価の還元にはならない」(椎名氏)、「コピーのあり方に関する議論は、反対側にある対価の還元という話がなければ議論のバランスが失われてしまう」(フジテレビジョン・デジタルコンテンツ局・佐藤信彦氏)など、権利者への対価の還元を前提に議論すべきだという意見が相次いだ。
また、テレビ番組製作者の代表として同委員会のオブザーバーを務める、全日本テレビ番組製作者委員会の寺島高幸氏は「現状著作権の窓口は100%テレビ局になっており、著作権は番組製作者であるプロダクション側にもあることを理解しているテレビ局は多くない。そのため我々の意思に基づいてコンテンツを展開していくのは難しい状況にある」と現状を訴えた。さらに「コンテンツ流通の活性化には、そのバックグラウンドである製作側の活性化が不可欠であり、国としてそれをどう維持していくかもぜひ検討してほしい」と続けた。
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