Verizon CommunicationsとVonageの間で争われている特許侵害訴訟の第2ラウンドが米国時間6月25日に開始される。同日、両社は、ワシントンDCの連邦控訴裁判所で開催される口頭弁論に臨む。
Vonageが主張するのは次の2点。第1に、同社は最初の裁判の開始前に大きな不利益を受けたと考えている。Vonageは、マークマンヒアリング(特許請求範囲の明確化を目的とした審問)の中で、いくつかの特許請求範囲について、過剰に広範な解釈がなされたと主張している。この解釈は、Vonageにとって裁判の中で大きな痛手となった。裁判では、陪審がこの広範な解釈を基にVonageが特許を侵害したか否かを判断したためだ。
Vonageが控訴審で行う予定の第2の主張は、米最高裁判所が最近下した判決が大きな根拠となっている。同判決により、一部の特許クレームに記載されている技術があまりに自明 であるため、その特許自体がそもそも有効性を欠くとの主張が行いやすくなる可能性がある。Vonageは、同社が侵害しているとされる技術もそれに該当しているとしており、陪審は(KSR InternationalとTeleflexの間で争われた)この裁判の判決が最高裁から出される前に評決を下したと主張している。
一方Verizonは、マークマンヒアリングに関するVonageの主張は、手続き上の問題により無効だと主張している。また同社は、Vonageが正規の裁判の中でこの問題を今まで一度も提起しなかったことから、KSR Internationalの訴訟の判決を使って問題の特許の明確性について争うことはできないだろうと見ている。
この点について、法律の専門家たちは、Vonageが控訴審で勝利する一番の方法は、マークマンヒアリングでなされた解釈の見直しを求めることだとしているが、その方法ですら成功の可能性は低いという。
Vonageはこの裁判に勝っても負けても、苦しい状況であることに変わりはない。同社のサービスの加入者数は減少の一途を辿っている。加入者の減少は、どのサービスプロバイダーにとっても決してプラスにはならない。また、同社の売りは基本的にVoIP(voice over IP)サービスのみであり、しかもVoIPサービスは急速に日用品化しつつある。間もなくVoIPサービスは、他の多くのサービスにバンドルされた1つの無料アプリケーションとして提供されるようになるだろう。電話会社やケーブル事業者は、すでにVoIPサービスをバンドルパッケージの一部として大幅な割安価格で提供している。
新規顧客を勝ち取るには、既存のVoIPサービスに新機能を追加するだけでは不十分だろう。Verizonがより強力なサービスをひっさげてVoIP市場に参入するとなればなおさらだ。Verizonの最高技術責任者(CTO)Mark Wegleitner氏は今週、同社がFiosサービスの一環としてVoIPサービスを提供すると発表した。
さらに、最近VoIPサービスを提供する新興企業が次々と設立されている。それらの企業は、より「電話会社にやさしい」手法でVoIP市場に参入している。例えば、JaJahは既存の固定電話機を使って格安料金で電話がかけられるIP電話サービスを提供している。このサービスでは、Vonageのようにルータを別途用意する必要はなく、またSkypeのようなソフトウェアも必要ない。
Vonageにとってもう1つの大きな問題は、E911(Enhanced 911)や捜査当局による通信傍受の援助法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)に関する義務付けをめぐる連邦通信委員会(FCC)やその他の規制当局との争いに、多大な時間、資金、労力を費やしてきたという事実だ。そして、同社はそれらの戦いの大半に敗れている。さらに同社は、全米で通信サービスを平等に利用可能にするための基金Universal Service Fund(USF)に寄付金を支払うと見られている。これにより、基本的に消費者が支払う通信料は引き上げられる。
ただ、Vonageが消滅するとは思わない。同社はあまりに多くの加入者を抱えているため、消滅はできない。しかし、来週開かれる裁判の結果の如何に関わらず、同社の前途が多難であることは間違いないだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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