自社サービスの魅力を6分で語れますか?

永井美智子(編集部)2006年12月21日 00時32分

 スタートアップのベンチャー企業にとって、大勢の前で自社のサービスを披露する場というのはなかなかない。ましてそれが名だたるベンチャー経営者やベンチャーキャピタリストが集う場ならなおさらだ。与えられた時間はわずか6分間。ここでいかに自社のサービスをわかりやすく、また魅力的に語れるかが今後のサービスの発展にかかわってくる。

 11月21日から22日まで、宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾートにおいて開催された、ベンチャー企業の経営者やベンチャーキャピタリストなどが集まるイベント「New Industry Leaders Summit 2006 Fall」(NILS)において、8名のベンチャー経営者やサービス開発者にこのようなチャンスが与えられ、製品やサービスが披露された。

 なかでも会場が大きく沸いたのが、takram design engineeringの「Afterglow」だ。takram design engineeringはデザインエンジニアの田川欣哉氏と畑中元秀氏が2006年に設立した企業で、親指だけで文章を入力できるキーボード「tagtype」の開発などを手がけている。

Afterglow Afterglowを使って、毛筆風の文字をスライド上に書き込んだ様子

 Afterglowはレーザーポインタを動かすことで、プレゼンテーションソフトを操作したり、スクリーン上に文字や絵を書き込んだりできるソフトだ。PCに接続したUSBカメラがレーザーポインタの動きを感知してその動きをスライド上に反映させる。ペンの太さや色を変えられるだけでなく、毛筆風のタッチも表現できる細かい作り込みが参加者の関心を引いていた。

 セッションでは、現在IT業界で注目されるWeb 2.0の流れを組んだサービスや、モバイルサービスが目立った。インフォテリアの「c2talk」は、インターネット上にあるさまざまなスケジュール情報を取得し、個人のスケジュールと併せて管理できるソーシャルカレンダーだ。サイボウズで作成したスケジュールデータも読み込めるようにするなど、既存データの活用に力を入れている。

 ネクストの「Lococom」は実際の場所を核にしたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)だ。自分の住んでいる街や好きな場所などの地域情報を交換、共有することで、ユーザーの日常生活をより豊かにすることをコンセプトとして掲げる。

 ベンチャーではないが、ソニーの実験的サービス「FLO:Q」はブログ上でユーザー同士をつなぐ。動画やポッドキャスト、アフィリエイトの広告などを掲載できるブログパーツだが、コンテンツを掲載するだけでなく、ユーザー同士がコミュニケーションできる機能を強化しており、閲覧者がメッセージを残せたり、お気に入りユーザーとして登録できたりする。

 モバイルサービスとしては、NAVIBLOGの「NAVISPACE」とMapMotionの「MapMotion Viewer」が紹介された。いずれも高機能化した携帯電話の処理能力を生かしたサービスだ。

 NAVISPACEは携帯電話からアクセスできる3Dの仮想空間で、ユーザー同士がチャットなどで交流できるサービスだ。NAVIBLOGの位置情報検索技術を利用して、ユーザーの実世界での移動を仮想空間に反映させることもできる。アプリケーションが不要で、数字キーを使って移動する。広告やアイテムの販売などで収益を上げる考えだ。

 MapMotion Viewerは携帯電話向けの地図閲覧アプリケーションだ。携帯電話に最適化した高速描画エンジンを搭載し、画面サイズよりも大きな地図を高速にスクロールしたり、無段階に拡大・縮小させたりすることができる。地図だけでなくちらしや雑誌など、これまで携帯電話で表現しにくかったデータも表示可能で、リンク情報なども掲載可能だ。

丸山勇人氏 ビッツテージ代表取締役社長の丸山勇人氏

 このほか、個人がインターネットを活用して、簡単にビジネスを始められるように支援するサービスも披露された。ビッツテージはインターネット環境と電話回線だけでコールセンタが開設できる「Keepa」を紹介。これまでコールセンタには大規模な設備投資や人件費が必要だったが、1人からでもコールセンタを始められる手軽さが売りだ。

 リアルコミュニケーションズの「RMドロップシッピング」は、「3分でお店を作ろう」というコンセプトの元に開発された。ユーザーが独自デザインの店舗を作れるほか、セグメントした顧客にメールマガジンを配信できる機能や売上ランキング表示機能など、さまざまな機能を用意する。

 米国ではベンチャー企業が短い時間で自社の製品やサービスを紹介するイベントとして「DEMOカンファレンス」が毎年開催されている。NILSでは今後も「Launch Pad」と題して、有望なベンチャー企業に製品やサービスを披露する場を提供する考えだ。

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