英国図書館は、現行の英国著作権法の「重大な改正」を要請した。同図書館は、同法の改正にあたり、デジタルコンテンツに関する規定を「明確に」盛り込むとともに、技術的進歩を考慮するよう求めている。
現地時間9月25日、マンチェスターで開幕した労働党大会で発表されたマニフェストの中で、英国の国立図書館である英国図書館は、従来の同国著作権法を拡大し、デジタルコンテンツの存在を十分に認識する必要があると警告した。
英国図書館館長のLynne Brindley氏は、CNET News.comの姉妹サイトであるZDNet UKが行ったインタビューの中で、「現行の著作権法は、技術環境の変化を認識するための重大な改正を実施しなければ陳腐化してしまう」と語った。
現在でも、デジタル著作権管理(DRM)技術やライセンス契約によって、著作権法適用の要件を満たさないコンテンツのコピーを制限することは可能だ。しかし、これを法的に明確化する必要がある、というのが英国図書館の主張だ。
「たしかにDRMは1つの技術的手段だが、問題は包括的に利用されてしまっている点だ。DRMは、障害者がコンテンツにアクセスする場合や障害者向けにコンテンツを保存する場合でも回避できず、また、(従来の著作権のように)失効することもない。よって、DRMは事実上、著作権法の例外規定を無効にしている」(Brindley氏)
英国図書館は、例外規定や公正な取引を保護したいと考えている。それにより、英国の各図書館は、コンテンツのコピーの作成や保存が可能になり、さらに研究目的や障害者向けにそれらのコピーを提供することも可能になるためだ。
Brindley氏は、「これは世界的、国際的な問題だ」と指摘する。「(デジタルコンテンツについても)従来の印刷物の場合と同様のバランスを取る必要がある。われわれは、(コンテンツの)作成者が報酬を受け取れる一方で、公益にもかなうようなトリアージ(優先順位の選別法)を模索している」(Brindley氏)
英国のデジタル権擁護団体、Open Rights Groupは、英国図書館が要請している著作権法の明確化を「心から支持する」としている。
Open Rights Groupのエグゼクティブディレクター、Suw Charman氏は、ZDNet UKのインタビューの中で、「重要な問題の1つは、企業が著作権法の制限条項や例外規定を無視している点だ。企業は、デジタルコンテンツに制限的なライセンスを課している」と語った。
またCharman氏は、DRMによる制限は、学問研究に特に大きな損失をもたらすと指摘した。
Charman氏は、「大学教員や学生は、図書館にある紙の新聞や雑誌を複写できるが、デジタル新聞や雑誌にはアクセス制限がかけられている。これは大変由々しき問題だ」とし、さらに「企業が独自のライセンスを作ることを認めれば、著作権法の効力を損なうことになる。著作権法よりも契約法の方が重要ということになれば、(コンテンツの)出版社や発行者に任意のライセンスの発行を認めることになる。そして今、そのようなことが現実に行われている」と語った。
英国図書館は、著作権法の厳格化を希望する人々と同法の徹底的な改正を望む人々の間の論争を沈静化する上で主導的役割を果たしたいとしている。
また同図書館は、著作権者の発見が困難な、いわゆる「孤児作品(Orphan Works)」の問題にも対処するよう求めた。
「著作権者が発見できないため、保管されたままの文献が山ほどある」(Brindley氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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