バージニア州アレクサンドリア発--YouTubeやMySpaceなどのウェブサイト上に掲載されている、ユーザーが制作したコンテンツを中心に構築されたオンライン文化が、新たに策定される協定によって危機にさらされる可能性がある、と一部の団体やハイテク企業が米国時間9月5日に警告を発した。
問題となっているのは、「Protection of the Rights of Broadcasting Organizations(放送機関の権利保護)」と呼ばれる協定だ。同協定の提唱者は、テレビ放送局やケーブル放送局(さらに現在はウェブ放送局も含まれる)が発信する信号の不正な再伝送を阻止するためのツールを各放送局が確実に持てるようにするために必要だと主張している。2003年に国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)の許可を得て同協定の起草作業が開始されたが、最終版は未だ完成していない。
一方反対派は、同協定はいわゆる「シグナルパイレシー(信号に対する海賊行為)」の撲滅という目的の域をはるかに超えていると主張する。彼らは、同協定が施行されれば、放送局やウェブ放送局は向こう50年間、信号の再放送を認可する特権を入手することになるばかりでなく、一般のインターネットユーザーも従わなければならない法的枠組みを追加することになり、さらに米国法に定められている公有作品のための既存の保護規定やその他の公正使用に関する規定を縮小することになると警告している。
ジュネーブで来週開催される会合で同協定の最新ドラフト(PDFファイル)の検討が行われる予定だが、それに先駆け、米国特許商標庁(USPTO)はバージニア州アレクサンドリアで討論会を開き、一般市民が意見を述べられる場を設けた。
2時間に及んだその討論会では、35の企業、団体で構成されるグループが連合を組み、同協定に対する異議申立書(PDFファイル)に連名で署名した。こうした企業、団体は、他のテーマに関しては互いに対立することが多い。異議申立書は討論会で配布された。同連盟の構成メンバーには、Dell、Hewlett-Packard、Intel、AT&T、 Verizon Communications、ソニー、TiVoなどの企業の他、米国図書館協会(ALA)、Broadband Service Providers Association、Home Recording Rights Coalition(HRRC)、電子フロンティア財団(EFF)といった団体が含まれている。
各企業、団体の立場はそれぞれ異なるが、彼らの主張はおおむね一致している。つまり、放送局やウェブ放送局の案(YahooなどDigital Media Associationのメンバーも同案を支持している)には、新協定の必要性に関する十分な論証がなされていないというのが彼らの言い分だ。仮に、本当にシグナルの盗難が主な懸念事項であれば、現行の米国法でも十分な保護が受けられる可能性があるし、より範囲を限定した案の策定も可能だ、と彼らは主張している。
しかし、現在の協定案では、消費者が現在享受している法的権利、例えば、家庭内でテレビ放送を録画し、後から視聴したり再生する権利が踏みにじられる可能性がある、と反対派の一部は主張している。
また同案は、技術的保護手段の適法性を認めている。つまり、仮に同案のまま協定が施行されれば、論議を呼んでいるデジタルテレビ放送に対する海賊行為の阻止を目的とした、放送フラグなどのコピー防止システムの導入を阻止するものが何もなくなることを意味する、とEFFの国際業務担当ディレクターのGwen Hinze氏は指摘する。「(そのようなコピー防止システムの導入を義務付ければ)機器の設計コストが増加し、その増加分が消費者に転嫁され、さらに消費者が利用可能な機能の数が減ってしまう」(Hinze氏)
また全米家電協会(CEA)の政府業務担当シニアバイスプレジデントのMichael Petricone氏は、「(同案では)放送局は、これまで全く前例のない、家庭や個人のネットワーク環境に対する支配権を掌握することになるが、仮にそうなれば、ブロードバンドサービスやホームネットワーキングサービス、さらにコンテンツの斬新かつ柔軟な利用を可能にする新しい、革新的な機器の発売を妨げることになる」と指摘する。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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