失敗の余地があるのは米国だけ
米国の研究制度の基礎が固まったのは第二次世界大戦の頃で、現在に続く制度の起源は1950年に成立した「National Science Foundation Act」にある。全米科学財団(NSF)は同法に基づいて設立されたものだ。米政府が、基礎研究を行なう学術機関に対して拠出している金額のうち、NSFにはおよそ2割が割り振られている。
米国の研究制度の目的は、基礎的かつ探索的研究に資金を供給する方法を作り出すことにある。そして、こうした研究が早期に実際的な利益を生み出すことは少ない。Randのアナリスト、David Adamsonによると、今日の様々な状況は研究制度の目的に逆行しているという。同氏は、「奨励(制度)があることで、科学者らは慎重さになりがちだ」と指摘する。
Adamsonは、その1例として、1980年に成立した「Bayh-Dole Act(バイドール法)」を挙げた。同法は、大学やその他の組織/団体に対し、連邦政府資金による研究プログラムの下でなされた発明に対する所有権の保持を認めたものだが、この政策が実用的なプロジェクトに取り組むよう資金的なインセンティブを提供しているという。
全米経済研究所(National Bureau of Economic Research:NBER)で科学分野の仕事に従事する人々について研究してきたEric Weinsteinによると、米国にはリスクの高いプロジェクトに資金を拠出できるだけの十分な資金力があるという。Weinsteinは、「われわれ(米国民)は、最も革新的かつ驚くような研究を行なうべきだ。なぜなら失敗できる余裕がある国は米国だけだからだ」と述べ、さらに「われわれは常に失敗を恐れず思い切った研究を行なうべきだ。それなのに米国の科学システムは、大量の最も低コストで行なえる、腕利きの職人向きの科学に密かにこだわっている」と語った。
Commission on Professionals in Science and Technologyのエグゼクティブディレクター、Eleanor Babcoによると、今日の研究は、早期に結果を出すことに大きな価値がおかれていることから、おそらく以前よりもリスクが少ないものになっているという。「早期に結果を生み出せなかったり、あるいは継続的に資金供給を受けられる理由がなければ(より探索的な研究は)もはや行なえなくなる、というのが今の米国の実情ではないか」と同氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス