携帯電話向けネットサービス大手のディー・エヌ・エー(DeNA)の株価は、同社が1月18日に発表した2008年3月期の連結業績予想の上方修正をキッカケに反転上昇の気配が鮮明になってきた。
2007年12月、増田寛也総務相が携帯電話各社に対して、有害サイトを閲覧できないようにするフィルタリング(制限に抵触しないデータだけを通過させるソフト)サービスを普及させるように要請。これがキッカケとなって、DeNAが運営する高校生など若年層もユーザーとする携帯交流サイトの「モバゲータウン」や携帯競売サイト「モバオク」の利用者減少につながるのではとの懸念から、株式市場で売りが先行する展開が続いていた。
12月12日からそれまでの東証マザーズから1部市場へと指定替えとなったものの、株価は50万円台での中段持ちあいが続いていた。
しかし、こうした市場関係者の業績への先行き懸念を払拭するように、同社が2008年3月期の通期業績見通しについて、増額修正を発表すると同時に大幅な増配を明らかにしたたことが好感され、株価の反転上昇につながったようだ。
同社は12月18日、2008年3月期の連結業績について、売上高を従来予想の255億円(前期比80%増)から290億円(同2倍)へ、営業利益を90億円(同2倍)から125億円(同2.8倍)へ、経常利益を126億円(同95%増)から126億円(同2.7倍)へ、純利益を45億円(同77%増)から63億円(同2.5倍)へとそれぞれ大幅に増額修正した。また、年間配当については、記念配当も含めて従来予想の930円から1800円(普通配当1300円、記念配当500円)への大幅増配も明らかにした。
業績見通しが大幅増額修正となったのは、主力事業である「モバゲータウン」の会員数が2007年12月末時点ですでに865万人、月間ページビュー(PV)も同149億PVに達し、会員数は同3月期末に比べてわずか9か月間で2倍弱の拡大をみせたことになる。
IT・ネット関連業種担当の外国証券のアナリストは「高校生世代では、モバゲーの加入率は50%に迫っているとされているほどで、今後も順調な拡大が見込まれる。引き続きアフィリエイト(成功報酬型)広告や、アバター(チャットなどのコミュニケーションツールで、自分の分身として画面上に登場するキャラクター)販売の増加が予想される。ただ、携帯電話キャリア各社は未成年者の有害サイト閲覧制限に向け、未成年者の新規契約時にフィルタリングサービスを義務付ける方向にあることは引き続き懸念材料」としている。
DeNAはこうした動きに対して、「モバゲータウン」において、コミュニティの健全性維持に向けた取り組みを大幅に強化することを発表している。モバゲータウンでは10歳代のユーザーの利用が多い(全体の約30%)ことから、18歳未満のミニメールを大幅に制限し、ユーザーの年齢前後2歳までの送受信のみに制限。13歳未満のユーザーはミニメールの利用は禁止した。
また、18歳未満の友達検索を大幅に制限し、ユーザーの年齢前後2歳までの友達検索のみに制限。さらにメールアドレス交換禁止の徹底し、システム対応を強化するとしている。2008年春までには、監視体制を約300人に増員し、サイトパトロールを大幅強化する方針だ。
DeNAの株価は、2007年12月6日に、その時点での年初来高値の88万2000円をつけた後、未成年者の有害サイト閲覧制限問題への懸念などから売りが先行する展開となり、12月中旬以降は50万円台での持ちあい相場を強いられ、1月17日には48万7000円の安値を付ける場面もあった。
しかし、18日の大幅業績増額修正を好感して翌営業日の21日からは反転上昇基調を鮮明にしており、先週末の25日には一時、62万9000円まで買い進まれる展開となってきた。今後中期的は70万円台固めから80万円を目指展開も期待できそうだ。
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