事業者への影響については、一般サイトを運営する事業者の経営を圧迫するという声や、業界の市場縮小につながるという声が多かった。特に危惧されるのが、一般サイトの広告売り上げだ。広告の売り上げはサイトの表示回数に比例することが多く、利用できるユーザーが減ればその分売り上げも減少する。このため、「スポンサーサイトがフィルタリングによって遮断されてしまうと、モバイル広告によるサイト運営が立ち行かなくなる可能性がある」(WEB110)
また、会員制サイトの場合も、「サービス提供側が予想していない範囲にわたって対象サイトの制限がかかってしまうことで、入会数が減少するなどの可能性が考えられる」(ドワンゴ)と懸念する声があった。
「利用者層や利用形態の違いに応じて、ビジネスモデルの見直しを図る必要性が出てくる」(NTTレゾナント)、「モバイルインターネット事業に関わる事業者全般に対してダメージが大きく、産業不況になる可能性がある」(ミクシィ)
このほか、ユーザーへの対応業務等が大幅に増え、それが事業者の負担になるとの見方もあった。「携帯電話事業者のフィルタリングに関する苦情対応や、18歳未満の利用者への手続きが煩雑化する」(ライブドア)、「監視強化等、サイトの規模に応じて費用が拡大し、経営に与える影響は大きい」(日本エンタープライズ)
携帯電話事業者が提供するフィルタリングサービスは、サイト単位ではなく、サイトが属するカテゴリ単位でアクセスをブロックする。このため、「常日頃きちんと取り組んでいる事業者のサイトが違法サイトと誤認識され、ユーザーからそしりを受ける可能性がある」(Yicha)といった心配の声があった。また、近年利用が増えている検索サービスについても、検索結果にフィルタリング対象サイトも表示されることで、「利便性の低下による利用減少は起こりうる」(インデックス)といった指摘があった。
こういった結果として、「市場が衰退する」という声が6件、「業界の競争力が減少する」という声が5件あるなど、携帯電話業界全体の行方を気にする声は多かった。「中高生で1日1〜2時間と言われる、『ケータイに触れる時間』が減ることが予想される。ゲーム、雑誌などの代替となる娯楽へのシフトがあるのではないか」(アサップネットワーク)
「世界各国がモバイルへの注目を集めている中、日本のモバイルサイト投資が停滞し、発展のスピードが遅くなれば、せっかくこれまで築いてきた世界の中での先行者優位の立場が弱まることになる。ネットの分野の中では日本が勝ち残れる数少ない分野であっただけに非常にもったいない」(ゆめみ)
このほか、青少年が携帯電話で見られるサイトが減ることで、「『ケータイ世代』にアプローチしたい企業が、自社やその商品またはそのサービスのアピール、マーケティング、コミュニケーションを行う等、顧客の囲い込みや売上拡大といった機会を損失することも考えられる」(日本エンタープライズ)というように、企業のマーケティング機会が減少するという答えも5件あった。
ただし一方で、青少年の購買力が低いなどの理由から、「影響は少ない」とする声も3件あった。また、「公式コンテンツプロバイダの売上増につながる」(jig.jp)という声や、フィルタリングにかからないようなサイトを事業者が作るようになり、「最後はサイト運営の質や広告のクオリティが高いサイトが残り、マーケット事態は今後も拡大する」(リクルート)、「現在アングラに潜りがちな成人向けコンテンツ市場の健全な発展に寄与する」(アサップネットワーク)「携帯電話の『安心・安全利用』への意識が向上する契機になる」(ウィルコム)と期待する声もあった。
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