発言小町、月間一人当たり利用時間に注目

山田康介(ネットレイティングス アナリスト)2008年09月01日 12時24分

 発言小町の利用動向が面白い。

 発言小町は読売新聞社運営の掲示板サイト。

 CGM(Consumer Generated Media)の一種で、一般ユーザーが質問や相談事世間話などを書き込み、他の一般ユーザーが回答や意見を書き込む形のサイト。類似のCGMサイトには、Yahoo!知恵袋や教えて!gooなどでよく知られるQ&Aサイトがあるが、Q&Aサイトが「知りたい事」に「答える」という機能的な側面が強いのに対し、掲示板は任意の話題を自由に書き込む要素が強いことから、ネット上の「おしゃべりの場」として利用されている。

 発言小町はCGMが注目を集める以前の1999年から運営されており、CGMとしては草分け的存在ともいえる。

 ネットレイティングスの過去のニュースリリースでも、近年のCGMサイトへのアクセス数の躍進ぶりを取り上げた事があるが、今回はサイトの質的指標のひとつである利用者一人当たりの利用時間に注目してみた。

利用者数と一人当たり利用時間(月間)
サイト利用者数(単位:千人)一人当たりの利用時間(時:分:秒)概要
Yahoo!知恵袋13,2300:13:03Q&Aサイト
教えて!goo6,4200:05:08Q&Aサイト
2ちゃんねる9,4010:56:19掲示板サイト
発言小町6751:21:50掲示板サイト
YouTube18,3291:17:38動画投稿サイト
Source:Nielsen Online NetView 2008年7月 家庭からのアクセス

 発言小町の利用者一人当たりの利用時間は月間1時間22分。2ちゃんねるやYouTubeを凌ぐ。

 なぜ発言小町の一人当たり利用時間はこうも長いのだろうか?

 元々新聞には投書欄というものが存在し、ネット以前から読者の「相談」や「意見」の受け皿として機能してきた。投書欄は投稿するのも楽しみだが大半の読者にとっては「読み物」としての利用が主だったのではないだろうか。

 これはネットの投稿欄である発言小町でも同じで、68万人全員が投稿や回答を書き込んでいるのではなく、大半のユーザーは投稿を「読み物コンテンツ」として活用しているのではないか。

 YouTubeのような動画投稿サイトも同じで、動画を実際に「投稿」しているユーザーよりもコンテンツとして「閲覧」しているユーザーの方が圧倒的に多い。

 発言小町が動画投稿サイトと違うのは、動画投稿サイトのコンテンツにはプロが作った商業コンテンツが(作り手の意思に関わらず)多く含まれているのに対し、発言小町のコンテンツは基本的に全て一般ユーザーの投稿とそれに対する他の一般ユーザーの反応のみで成り立っている、という点だ。

 それが「コンテンツ」として充分魅力的で、発言小町ユーザーにとっては平均1時間22分という時間を過ごすのに値するという点が興味深い。

 実際に書き込みを見てみると「どうしたらいいでしょうか?上司が怖い」や「母を食い物にする親戚」、「猫が私のあごをぺろぺろ」など、タイトルだけでも非常に興味をそそられるものが目に付く。

 真実は小説より奇なり、といったところだろうか。

 このようなユーザーが匿名で書き込む形のサイトでは得てして誹謗中傷や不適切な表現が起こりやすいが、新聞社という看板を背負った運営会社が責任をもって管理している事もあり、発言小町はユーザーにとっては「安心して集えるおしゃべりの場」となっているのではないだろうか。

 発言小町を利用しているユーザーのプロフィールにも特徴が見られる。

利用者属性の比較
サイト男性女性
Yahoo!知恵袋54%46%
教えて!goo54%46%
2ちゃんねる60%40%
発言小町46%54%
YouTube58%42%
-19才20-29才30-39才40-49才50才-
Yahoo!知恵袋16%12%27%27%18%
教えて!goo12%13%29%28%19%
2ちゃんねる16%11%28%29%16%
発言小町7%10%36%30%17%
YouTube27%12%21%25%15%
Source:Nielsen Online NetView 2008年7月 家庭からのアクセス

 発言小町は他サイトに比べ女性が多くなっているが(インターネット全体の性別利用者割合は男性55%女性45%-2008年7月)、女性をメインターゲットにしているとすれば、男性の利用が意図したよりは多いとも言える。

 年代別では、他サイトに比べ30代、40代に集中している事が分かる。「ネットでおしゃべり」というキーワードと重なる部分があるようだ。

 発言小町の広告媒体としての可能性も興味深い。

 利用者数では68万人とメディアとして大きいとは言い難いが、その68万人が月間平均で1時間22分滞在しているとなるとその媒体価値は違って見える。メディアとしては日本で最も価値のあるYahoo!トップページでも、月間の一人当たり利用時間は38分32秒(2008年7月度データ)。発言小町の約半分だ。

 ネットレイティングスでは量的指標と質的指標の両方の性質を持つ総利用時間を注目すべき指標のひとつとして紹介しているが、実際に総利用時間を比較すると発言小町は利用者数では10倍の差がある教えて!gooを超える。(総利用時間は利用者数と一人当たり利用時間の積。)

総利用時間
サイト総利用時間 (単位:千分)
Yahoo!知恵袋172,772
教えて!goo32,956
2ちゃんねる529,431
発言小町55,239
YouTube1,422,935
Source:Nielsen Online NetView 2008年7月 家庭からのアクセス

 広告枠の価値が表示回数であるインプレッション数(Total Impresssion)を基本として計測されている現在、単に表示回数の多さやリーチのみでなくその広告がどの位の長さ個々のユーザーに表示されていたのか(Total Exposure Time)を媒体価値の判断基準として想像を巡らしてみるのも面白い。既存メディアの媒体価値の常識も、少し変わって見えてくる。

 発言小町は、新聞が本来持っていた様々な機能の一つを、CGMという「ユーザーにより大きなイニシャチブを与える」新しい形でネットに移行した例として、引き続き注目していきたい。

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