次に動画配信の効果測定についてみてみよう。動画配信を行うウェブサイトのビジネスゴールは大きく分けて2つに分類できる。ひとつは、無料でドラマなどのコンテンツを提供する代わりに、コンテンツの合間にテレビCMのような広告を挿入することによる、広告収益をゴールとしているもの。もうひとつは、訪問者に動画を見てもらうことにより、商品/サービス理解やブランド認知を促進させるものである。
動画の効果測定で重要なのが、閲覧状況を把握することだ。例えば、長い動画配信の場合は、配信完了時を100%としたときに、配信状況を25%、50%、75%と小さなゴールを設定し、動画毎に配信完了率を測定する。それぞれ、25%、50%、75%、100%に達したときが、コンバージョンという訳だ。あるいは、単純に平均の閲覧時間を測定してもよい。
それでは、これらの効果指標により、どのような最適化を行うことができるのか。広告収益モデルの場合は、訪問者の閲覧レベルを理解することにより、広告インプレッションが最大化できるよう、広告の露出頻度を最適化することができる。商品/サービス理解、ブランド認知の場合は、コンテンツを最後まで見てもらうことが重要なので、訪問者の興味が持続する時間内に、コンテンツの長さを調整する、という最適化を行うことができる。
動画配信効果測定の代表的なKPI
それでは、インターネットマーケティング担当者は、どのような局面で実際にビジネスの意思決定を行っているのか、オムニチュアの米国本社の事例をご紹介しよう。
オムニチュアは企業向けのウェブ解析やオンラインビジネス最適化のツールを提供しているので、ウェブサイトの目的は質の高いリード(見込み客)を獲得することである。多くのBtoB企業が行うように、オムニチュアも動画配信やホワイトペーパーなど商品や業界トレンドの理解促進のためのオファー(*)をキャンペーン毎に提供していた。
あるキャンペーンで、インターネットマーケティングの責任者のマイケルは、オファーの内容は同じでも、ホワイトペーパーのダウンロードとウェビナー(ウェブ+セミナーの造語)の形式の違いによる効果をA/Bテストで測定することにした。
結果、リードの獲得数は、ホワイトペーパーのダウンロードのほうがウェビナーよりも42%ほど多いという結果になった。ここで単純に考えると、ホワイトペーパーのダウンロードのほうがKPIが高いので、より効果的という判断を下しそうになるのだが、マイケルは他の重要なKPIの比較も怠らなかった。
ウェブ上で完結するリード獲得というゴールだけではなく、最も重要なビジネスゴールである「契約を締結する」というゴールまでをKPIとして設定したのである。すると、ウェビナーのほうがホワイトペーパーのダウンロードよりも商談に至る確率が155%高く、契約率も80%高く、1契約あたりの金額が2倍も高いことが分かった。
というわけで、この数ヶ月間でオムニチュアの米国サイトの戦略は、ホワイトペーパー形式のものから、ウェビナー形式のものに大きくシフトしたのである。
##今回ご紹介したオムニチュア米国本社のマーケティング事例は、「クローズドループ」と呼ばれる、ウェブ解析のデータに外部データ(このケースではCRMデータ)を自動的に関連づけて分析を行うマーケティング手法で、第一回でご紹介したウェブ解析の成熟度で言うと、Step3にあたるものだ。このクローズドループのアドバンス手法に関しては、いつか機会があればご紹介したい手法のひとつである。
*オファー:ダイレクトマーケティングにおいて、見込客の申し込みや購入を促進するために提供するもの。BtoCでは豪華賞品のあたるプレゼントキャンペーンや、送料無料キャンペーン、BtoBでは無料トライアルや業界レポートの提供などがある。
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