モバイル広告市場は、2000年頃からPCインターネット広告市場の影に隠れつつも急激に拡大してきた。
これまでのモバイル広告市場の推移は、電通が毎年公表している「日本の広告費」から窺うことができる。
市場の黎明期から2006年頃までのモバイル広告市場の拡大の原動力となったのは、広告主サイドでは主にキャリア公式サイト上で有料コンテンツをユーザーに提供して収益を得るコンテンツプロバイダ(以下CP事業者)と、消費者金融事業者である。
モバイルインターネット上では、キャリアが運営する公式サイトの存在が、PCインターネットとは異なる、エンタテイメント系課金コンテンツビジネス主導型の独自の市場発展モデルを作り上げた。
CP事業者が公式サイト上で着メロ、着うた、ゲームなど同業カテゴリのコンテンツを提供する事業者と競争する際に、より優位に事業を行うためには、メニューカテゴリリストでいかに上位表示されるかということが命題となった。
CP事業者は、自社サイトが上位表示されるためには、ユーザートラフィックを多く獲得する必要があったため、アフィリエイト広告をはじめとして、様々なモバイル広告によるプロモーションを実施する必要に迫られた。
あるメディアレップによると、当初モバイル広告に出稿をする広告主の8割以上はCP事業者であったとのことである。
これを背景として、キャリア公式サイト上でのコンテンツ課金ビジネスが急拡大し続ける2006年頃までは、CP事業者によるモバイル広告支出は急激に拡大し続けたのである。
従来のモバイル広告市場の拡大は、その意味においては、モバイルコンテンツ市場拡大の波及効果がもたらしたものであり、モバイルコンテンツ課金ビジネスの発展がもたらした副産物であったといえよう。
消費者金融業は、PCインターネットメディア上にも多くの広告出稿を行っている業種であったが、モバイルメディアにも同様に積極的な広告出稿を行ってきた。
モバイルは、ユーザーが常に持ち歩き、パーソナルな情報収集機器であるため、ユーザーの緊急的な金融需要と、それに応えるサービス提供者とのマッチングの場としての効果をもたらす。
また、PCインターネット有力メディアにおける業種出稿規制、出稿枠の限界などにより、プロモーション領域をモバイルメディアに移してきたことも背景とし、消費者金融業のモバイル広告への出稿支出額は、2006年前半頃までは拡大し続けた。
その意味において、モバイル広告市場はPCインターネットの付随的あるいは補足的な媒体として、受動的な市場特性を持ちながら市場を拡大してきたともいえよう。
このように、モバイル広告市場黎明期から2006年頃までは、CP事業者と消費者金融業の2つの業種がモバイル広告市場を牽引し続けてきた。そして、これらの広告主を多く取り込んだ、広告代理店、メディアレップ、メディア媒体社は同時に売上業績を拡大し続けたのである。
モバイル広告市場におけるこの一連の流れが、「市場の第一階層」として位置づけられる。
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