SUUMO流ビッグデータ活用術--蟻のフェロモン伝達方法を応用

 朝日インタラクティブが10月31日に開催したセミナー「CNET Japan Conference 2013マーケティング・インテリジェンス実現セミナー」より、講演レポートをお送りする。

 この日の最終講演をつとめたのは、リクルート住まいカンパニー データマーケティンググループ チームリーダーの吉永恵一氏。「SUUMO流 ビッグデータの活用術」と題し、同社の事例を中心に講演した。

 「SUUMO」は、リクルート住まいカンパニーが運営する不動産・住宅情報サイトだ。月間のページビューは1億5000万に上るとともに、月間セッション数は1500万、月間ユニークユーザー数は900万強であり、まさにビッグデータが生成される場だといえる。吉永氏は「ビッグデータは魔法の箱でもなければ、打ち出の小槌でもない。本当に必要なのかどうか、よく考慮し、まず目的を明確に定義し、目的ありきでデータを集め、策を打っていくことが重要」と語る。

 ビッグデータはなぜ流行っているのか。「今の時代、One to One、個のマーケティングが求められており、ビッグデータと相性が良い」(吉永氏)のだという。

 人は体調不良に気付き、健康診断をすると、病名が特定され、投薬や注射などの治療がなされ、また、その効果が測定される。これを企業になぞらえると「KPIが不調であることに気づき、現状を診断し、原因が特定され、策が講じられ、効果を測定」(吉永氏)という流れになる。「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をどう設定するか。最終的には利益だが、その下位的なKPIは何か。成長のドライバとなるのは何か」を考えることも重要だ。

 予測されたKPIと実際の結果との間にギャップがある場合は、価格付けなどの要素をどのように変更すると、そのギャップを埋められるのかなどをシミュレーションする。しかし、「SUUMO」では、シミュレーションパターンは数千億通りにもなり、すべてのシナリオの組み合わせをシミュレーションしなくても最適な解にたどり着けるよう、最適化技術とコンピュータを用いて、コストが最小になり、効果が最大になる均衡点を探し出すという。

限られた予算をどう配分すれば、効果を最大化できるのか? 天文学的なパターンの全てを手作業で検証するのは困難だ

 リコメンデーションとは、情報で溢れかえっている今の時代、情報を整理し、エンドユーザーが欲している情報を届けることだという。その実行の仕方には、“マス”に向けては、特定のターゲットを狙うものではなく、セグメントは、性別、年代など、さまざまなセグメント軸に対し、別々のコンテンツを提示する。One to Oneは、個々人の嗜好に合わせて、コンテンツを出しわけるのだ。

 ちなみにSUUMOの場合では、“蟻のフェロモン伝達方法”を応用しているという。蟻がビスケットを選ぶと、蟻のフェロモンが、そのビスケットに付着する。ここで、付着したフェロモンが蒸発しながら、他の蟻に付着するといった連鎖により、他の蟻のフェロモンが伝達される。これをSUUMOの物件情報に適用すると、自分と類似したカスタマーが物件を選ぶと、価格、地域、間取りなどの嗜好が、物件に付与される。それが繰り返されることで、嗜好が似通った物件が浮かび上がり、物件が推薦される仕組みだという。

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蟻のフェロモン伝達モデルにヒントを得た、SUUMOのリコメンデーション生成アルゴリズム

 こうした方法論を、どう実際の企業経営に取り入れ、成果を得ていけばいいのか。最後に吉永氏は、来場者にこう語りかけた。

 「ビジネスインフラの価格破壊が続いています。安価なクラウドサービスや、オープンソースソフトを用いたBIツールなども出てきています。すでに、一部の大企業だけにしかデータ解析の取り組みができないという時代ではなくなりました。ビッグデータ分析へのハードルは下がっています。取り組むメリットではなく、取り組まざるデメリットすら意識される状況になりつつあるいま、重要なのは社内のコミュニケーション。分析者と意思決定者、実務家は、仕事の属性が異なるが、だからこそ相互に円滑な意思疎通を図ってほしい」として、セミナー全体を締めくくった。

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