それは100%狙っていたわけではないんです。最初に苦労してコロニーを維持したユーザーの方が残ってくださっているので、入ってきたばかりの人はご近所さんだし助けなきゃいけない、というのが自然に起こって、そういう文化が生まれました。
僕は、それを手助けするだけで、例えば、資源の足りないユーザーの画面には「満タン」ボタンを付けて、ほかのユーザーが簡単に補給できるようにしたとか、初心者だとわかるようなマークを付けたりとか、事あるごとに「初心者の皆さんには優しくしましょう」と訴えたりとか。ただ、基本的にみんないい人なんだなと思います。
あとは、コロプラという匿名の仮想世界でも、地域感や社会感が出てくるので、人のいい部分が出やすいのかなと思います。コロニーには完全にIDが付けられていて、番号は変わらないんです。例えば、ニックネームだとニックネームが変わると別人っぽくなりますよね。でもコロプラだと不変のIDが付いているので、変なことをするとそれは噂として回る。本当に社会の縮図的な構成になったので、それが抑止力として働いて、悪いことはできない、いいことをしましょうという文化になっているんじゃないかなと思っています。
ただ、それも狙ったわけではないんです。なぜコロニー番号を採用したかというと、個人情報を一切取りたくなかったんです。位置情報という、あまり他人に見られたくないものを扱うので、逆にほかの個人情報は一切取らない方針を採っています。登録にメールアドレスも取りませんし、そもそもユーザープロフィールもない。ニックネームを自分で名付けるところもない。ニックネームは、何か自分と紐づけた名前を付けてしまいがちなので、見る人が見ればわかってしまう場合があるんですよね。要するにコロプラは、ユーザーが自分自身を主張するものは一切許さないという立ち位置を取っているんです。
ユーザーのメールアドレスを持っていないので、メール配信も一切していません。そうなると、コンテンツ自体のおもしろさで人を引きつけるしかないので、そこには気を遣っています。例えば、コロニーにときどき隕石が降ってくるので、「隕石が降っていないかな」と心配するような仕掛けです。
運用側から見ると、「世界を小さくできる」ということがあります。例えば、部活の試合って、他校戦、地域戦、都道府県戦、全国戦という構造になっていますよね。よく「俺は県で3位なんだよ」という言い方をしますが、それができるのは「地域」という小さな世界があるからなんですね。そういうのはヒーローを生みやすい。例えば、県大会では全然駄目だとしても、その地域では1番になれる。そうやってヒーローが生まれやすいと、それを目指す人も増えるし、「この“中毒者”には勝てないな」みたいなものがなくなってくる。
何となく雰囲気ですね。「俺はコロニー内の人口が一番だし」とか、「俺は一番お金を持っているし」「地域でよく慕われているし」みたいなものがヒーローになる。
ただ、コロプラは競争要素を一切なくしているんです。ランキングすらなくて、それは狙ってやっています。楽しみ方をそこに縛り付けてしまうので良くないなと思って、あえて外しました。
現在はユーザーからの寄付、ECサイトのアフィリエイト広告、モバイルサイトなどに登録させるアフィリエイト広告の3つが収益源になっています。あとは、スポンサー契約をしてゲーム内のお土産アイテムを追加するという試みをしているところです。ただ、これだけでは1カ月1億円売り上げるのが精いっぱいという予測も持っています。
なので、もっと幅を広げて、位置と連動した広告を提供していきたいと思っています。企業目標として「人が動くと日本が元気になる」――人が動くとそこに消費が生まれて地域も潤うし、行った人も楽しい。コロプラはその動機づけになればいいかなと思っています。それで、その地域活性にかかわる部分で「われわれにも少し下さい」という形で収益を上げていければいいなと思っています。
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