それはもう、ひどいです。画面の大きさもありますし、端末の処理速度も全然違います。端末だけでなく、通信事業者ごとにも違う。さらに、海外の場合は日本のように端末の世代が変わるとみんなが買い替えるということはなくて、かなり古い機種でもずっと使われて残っているんですよね。
だから、サンフランシスコにある当社の子会社に行くと、倉庫の中にデバッグのための端末が300台ぐらいずらっと並んでいます。すべて回線契約もしていますから、その管理だけでもものすごいコストがかかっています。
iPhoneの場合は端末の種類が基本的に1種類(※編集部注:iPhoneは2Gモデルと3Gモデルがあるが、ディスプレイサイズなどは同等)なので、そこが既存の携帯電話とは大きく違います。
iPhoneのビジネスモデルは、我々にとってある意味革命的なモデルだと思います。何よりも、通信事業者に一切お伺いを立てなくていい。例えば、我々が出すゲームタイトルについて、ソフトバンクモバイルに言う必要はないわけです。
アップルが通信事業者のような締め付けをされると困るのですが、基本的には何でも受け付けますという姿勢ですし、アップルの審査も公序良俗に反しないかどうかと、ウイルスなどのチェックという程度です。ある意味、我々が何を出そうが、値段をいくら付けようが基本的には自由なわけです。そんなプラットフォームは、今まで世の中に1個もないんです。PCでも、家庭用ゲーム機でも存在しない。ここまで整っているビジネスモデルを提供している会社というのは、世の中で本当に初めてです。
iPhoneはすでに世界で600万台以上出荷されていて、かつiTunesという安定したプラットフォームがある。恐らく本当に世界でも初めて、これだけ整った環境を作っているのが今回のiPhone、そしてApp Storeのビジネスモデルだと思います。
実際に私は、海外の通信事業者を回って本当に苦労しましたので、「こんなにひどいのか」というのは何度か思い知らされました。「コンテンツに興味はない」と言われたんです。「ゲームの良し悪しにはいっさい興味はありません。売れるものだけ持ってきてください」と。つまり、ゲームがどれだけ面白いかよりも、有名人が出演しているかどうかのほうが重要だと。その上、売り上げの半分を手数料として取られ、数百機種に移植しないといけない。
iPhoneは端末自体の魅力もすごいんですが、そこにビジネスモデルが合わさっているものはほかにないんです。ビジネスモデルだけがあるのもありますし、端末だけが良いというものもあるんですけれども、両方が本当の意味でマッチしているのは、iPhoneが初めてではないかと思います。
そうですね。端末の数だけで言えば、Windows Mobile端末も多いです。我々は別にiPhoneだけをやっていこうと思っているわけではなく、本当に良いプラットフォームで、我々にメリットがあれば積極的に行こうと思っているのですが、残念ながら、iPhoneほど安心感のある環境を用意しているところは正直ないんです。
すでに600万台売れていて、それがこのまま伸びていく。少なくとも機種が増えるのではなくて、1機種が増え続ける端末というのは、ほかにないんです。
あまり気付いていらっしゃらない方が多いのですが、我々ゲームメーカーにとって、画面のサイズというのが実は死活問題なんです。映像が中心であるゲームの場合、画面サイズが変わると基本的にソフトは全部作り直しになります。
端末メーカーは「縦横がちょっと変わりました」と平気で言うんですけど、縦横が変わると結局キャラクターの移動量も変わるわけですから、プログラムそのものをほぼ総取り替えしないといけない。横の長さが変わると、いままで背景がなかった部分を作らないといけないわけです。キャラクターが歩かないはずだったところまで歩かないといけなくなるので、結局ほぼ作り直しです。テレビだと映るサイズがちょっと変わるぐらいなのかもしれませんが、ゲームの場合は全然違います。
その意味で、単一端末というのは我々にとってはものすごく大きなメリットです。単一のものが数多く出荷されるという意味では、個人向けゲーム機に似ていますね。
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