--サービスのポイントとなるのは、どんな音楽を配信するのかというところでしょう。アップルコンピュータのiTMSも国内のすべてのレコード会社と契約できているわけではありません。
我々は25年以上、日本の音楽市場の活性化に寄与してきたと思っています。その点でレコード会社との信頼関係がある。音楽配信についても、右肩下がりの音楽パッケージ市場を活性化したいという思いがありますから、そこを共有しながらお互いに成功できる可能性を探りたいと思っています。ただ、サブスクリプションモデルは日本において非常に新しいモデルですので、レコード会社やJASRACと密に話し合っていきたいと思っています。
--サブスクリプションモデルはどこまで日本で受け入れられるでしょうか。楽曲をPCにダウンロードするだけではなく、ポータブルオーディオプレイヤーに保存して持ち運びたいという要望もあるでしょう。
Napsterはポータブルオーディオプレイヤーに無制限に楽曲を転送できる「Napster To Go」というサービスも提供しています。日本でもNapster To Goは展開する計画ですので、PC上で聞ける楽曲をそのまま対応のポータブルオーディオプレイヤーに保存して聞けるようになります。これは経験してみるとわかりますが、非常に快適です。
音楽配信サービスというと「1曲150円程度で楽曲をダウンロードする」というイメージが浸透していますが、そもそも音楽配信というのは音楽データをネットワークを通じてユーザーに届けるというものです。サブスクリプションというと分かりにくいかもしれませんが、簡単に言えば、百数十万曲が入っているパーソナルな視聴機を毎月一定の額を払うことで手に入れるようなものです。もしくは、パーソナルラジオを持つと考えてもいいでしょう。
ダウンロードモデルに対するサブスクリプションモデルの優位性という点で言えば、数年前のエンコーダでリッピングした楽曲と、今のエンコーダーでリッピングした楽曲では飛躍的に音質が違います。今後もさらに技術革新によって音質は良くなっていくでしょう。
そうなると、「楽曲データは一時的に扱っているもの」という意識が生まれるようになると思っています。Apple CEOのSteve Jobsは「楽曲を永久的に保有できる点で、ダウンロードモデルはサブスクリプションモデルより有利だ」という話をしていますが、ある日音質が劇的に向上したiTMSが始まった場合、1曲150円で1万曲購入したユーザーが楽曲を買い換えるのかいう問題が起きてくる。一方で、サブスクリプションモデルならば、ファイルをダウンロードしなおせばいいんです。
--タワーレコードはEコマースのほか、bounce.comのような音楽情報サイトも手がけていますね。これらのサービスと音楽配信を統合していくのですか。
それは考えています。「NO MUSIC, NO LIFE」を志向する音楽ファンの人に、店頭、音楽配信、Eコマース、音楽情報を複合的に組み合わせて、さらに魅力あるサービスを提供したいですね。
--そうすると音楽配信サービスが始まる2006年4月にはウェブサイトの状況も変わっているのでしょうか。
そうですね。
--配信する楽曲の目標数は?
最低でも100万曲は揃えたいと思っています。なぜかというと、タワーレコードの渋谷店で取扱っているCDの数は約15万タイトルです。仮に1タイトルに10曲入っているとすると、店頭には150万曲が存在することになる。そうなると100万曲を揃えてもまだ実店舗に負けています。音楽配信はバーチャルスペースで物理的な制約なく楽曲が置けるという点がメリットの1つだと考えていますので、少ないながらもまずは100万曲を目標にしていきます。
タワーレコードは現場のスタッフを中心にニッチからマスまで幅広い音楽知識を持っている人間がたくさん集まっています。ですから、ただ100万曲を集めるだけではなく、店舗でのノウハウを生かして楽曲とユーザーを結びつける取り組みを進めていきます。
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