インターネットが登場して約10年が過ぎた。現在、ネオテニーの代表取締役社長やシックス・アパートの会長、米Technoratiのバイスプレジデントなど、多くのインターネット関連企業で役員を務める伊藤穣一氏がデジタルガレージを共同で設立したのも、10年前の1995年である。デジタルガレージでは8月30日に設立10周年を記念したイベントを開催し、伊藤氏が基調講演にてインターネットの重要なキーワードとなる「オープン性」について語っている(関連記事)。
伊藤氏は企業のみならず、Creative CommonsやICANNの役員も務めるなど、インターネット業界では大きな影響力があり、この業界について一番多くを語れる人物の1人と言っていい。その伊藤氏に、インターネット業界のこれまでと今後について聞いた。
--伊藤さんは、インターネット業界に最初から関わってきて、現在もこの業界でベンチャーキャピタリストとして、また企業やNPOの役員として活躍されていますが、この業界の10年を振り返って、どう思われますか。
この10年間に、バブルがありましたね。Netscape Communicationsの上場がバブルのはじまりで、AOL Time WarnerがTime Warnerになった時がバブルの終わりだと思うのですが、このバブルの異常性を省くと、インターネットは自然な成長を遂げたように感じます。
10年前には、インターネットがうまくいかないと思っていた人たちがたくさんいました。それが今の若い人たちは、インターネットがなかったことを知らない人さえいるのです。10年前には想像できないことがたくさんありましたが、今の若い人たちはきっと10年後がかなり想像できているのではないでしょうか。インターネットや携帯電話が発展し、普及するにつれて、生活もどんどん便利になっていくことを実感していますから。
それが、今の大人にはわかっていない人もいますね。そこにギャップが生まれつつあります。「クリエイティブクラス」といって、ネットを完全に理解して使っている人たちと、使っていない人たちのギャップが発生し、デジタルデバイドが世代間で起きているのです。これは、今後どうすべきか考えていかないといけないでしょうね。
--こうしたギャップは埋まらないのではないでしょうか。
確かに埋まらないでしょうね。ただ、マーケットシェアとして、ネットを理解する人が増えることは確実です。理解している世代に合わせて、音楽や映画の消費の仕方、ビジネスのやり方、文化的なしきたりなど、すべてが変わりつつあります。
しかし、現時点で法律やビジネスモデルを考えている人たちは、どちらかというとあまり若くない。年功序列型の企業がイノベーションに取り組もうとして、とことん失敗しています。
例えば携帯電話などは、一番面白い使い方ができるのは日本なんです。そして、それを使いこなしているのは若い人たちです。ポケットベルも、あれだけ使い勝手の悪いサービスであったにも関わらず、若者の間で爆発的に流行しましたよね。きっと利用者である若者がサービスを考えていたら、もっと面白いものになったのではないかと思いますね。
米国は若い世代をサポートしています。Mark Andreessenが20代の頃にNetscapeを創業することも自然でしたから。日本は本当に面白いことをやっている世代をサポートしていない気がします。今後、日本の年功序列やハードウェアメーカー志向のイノベーションのやりかたをいかにしてぶち壊すかが重要となるでしょう。
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