---ITはどんどん複雑化しています。ついていけない、うんざりだという意見を耳にすることはありませんか。
めまぐるしい変化やIT環境の管理技術・知識の進化についていけないと言う人もいるでしょう。これは裏を返せば、複雑なことは十分なノウハウを持ち、規模の利益を発揮できる専門家に委託したいということでもあります。
---先月、HPはビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)に参入しました。P&Gに財務・管理サービスを提供することになったのはなぜですか。
BPO市場には分野を絞って参入することにしていました。HPのサービス戦略の特徴の1つは、広く浅くではなく、狭く深く活動することで、その分野の強力なプレイヤーになるというものです。われわれはBPOにもこのアプローチを採用しました。われわれは財務・管理というセグメントを選び、自社業務のBPOを通してベストプラクティスを蓄積し、取引処理用エンジンを開発しています。
---年間400万件の請求書を処理することが可能ということですが、自社の財務・管理業務もサービス部門にアウトソースしているのですか。
はい。他社がHPにIT業務、P&Gの場合は財務・管理業務をアウトソースしているのと同様に、HPの最高技術責任者(CIO)はIT業務をHPのサービス部門にアウトソースしています。HPの最高財務責任者(CFO)は財務・管理分野の金融取引処理をHPのサービス部門にアウトソースしています。
---いつからですか。
昨年の11月に始まったばかりです。どちらの場合も、われわれは通常のアウトソース契約と同じように、社内のリソースをサービス部門に移管しました。そういうわけで、HPの財務・管理部門の一部は、今はBPOプラクティスに統合されています。
---HPにとって、BPOの魅力は何ですか。場合によっては、利幅が薄くなる恐れもあります。文書の処理や対応に大勢の人間が関与することになりませんか。
ビジネスプロセスアウトソーシングは、サービス産業の次の注目分野になると考えています。ご指摘の通り、大勢の人が関与するという点では人的要素もありますが、自動化は大きなメリットをもたらします。
---具体的には何を自動化するのですか。
取引を処理するプロセスです。たとえば、文書管理システム、データベース、アーカイブ・検索機能の利用や、ワークフロープロセスなどを自動化します。財務・管理プロセスのような分野には自動化の余地がたくさん残されています。
---今後、財務・管理以外の分野に参入する予定はありますか。
われわれは財務・管理分野に照準を絞っています。今後も、この分野の強化に取り組んでいくつもりです。とはいえ、企業によって財務・管理に含まれたり、含まれなかったりする業務があることも事実です。従業員の立替経費の精算などはその一例でしょう。このような業務は人事部門が担当する場合もあれば、財務・管理部門が担当する場合もあります。給与支払のなかにも、財務・管理部門が担当する業務もあれば、人事部門が担当する業務もあります。
このように、切り分けが難しい分野には対応していくつもりです。顧客にとっては、こうしたグレーの部分が重要ですからね。しかし、あくまでも焦点は財務・管理分野に置くつもりです。
---今年はBPO事業の初年度となりますが、受注目標額があれば教えてください。
具体的な金額目標は設定していません。見積依頼はこれまでに20件以上いただき、有望な案件については話を進めています。どちらかといえば、新興企業のアプローチに似ていると言えるでしょう。まずビジネスを立ち上げ、最初の仕事を勝ち取るために奮闘しているといったところです。
---サービスの提供に必要な労働力はどうしますか。インドや中国のような人件費の安い国を利用しますか。
ハブとなるのはインドのバンガロールです。メキシコのグアダラハラでも一部の業務を処理しています。シンガポールにも拠点があります。スペインにも一カ所ありますね。
---HPのCEO選に敗れるというのはどんな気持ちなのでしょうか。かつて、あなたはCarlyとCEOの座を競い合いました。当時の話を聞かせてもらえませんか。いずれはHPのような企業を経営してみたいと思いますか。それはあなたの野望の1つなのでしょうか。
私にとって、そのことは大昔の話です。HPの経営者にCarlyを選んだ取締役会の決定は、あの時点では間違いなく最良のものだったと思います。われわれは驚くべき前進を遂げました。IT業界における史上最大の合併を成功させ、会社のポジショニングをやり直したのです。こうした偉業を達成するためには、非常に強力なCEOが必要です。私はCarlyがCEOに選ばれたことに満足しています。それが会社全体にとってよい選択だったと思うからです。
それに、今の仕事は業界でもっともやりがいのあるものの1つだと感じています。私がHPで担当している仕事の内容を見てください。この新しいTechnology Solutions Groupほど成長の可能性に満ち、また株主価値の創造に寄与する可能性のあるものは滅多にありません。
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