「モバイル通信事業は利益が出やすい」--サイボウズの自信の理由

永井美智子(編集部)2006年06月20日 20時16分

 サイボウズが7月3日、東京証券取引所市場第一部へ指定されることが決まった。1997年の創業から、2000年の東証マザーズ上場、2002年の東証二部への市場変更を経て、9年で一部に指定されたことになる。

 そのサイボウズは、ウィルコムと提携して2006年内にモバイル通信事業に参入する。ウィルコムの回線と端末を利用するMVNO(仮想移動体サービス事業者)と呼ばれる形態で、音声通話およびインターネット接続サービスを提供する。自社のグループウェアである「Office 6」の顧客を主なターゲットとしており、携帯端末からでも安全にOffice 6にアクセスできることを売り込む。

 すでに10社ほどを対象にテストサービスを始めており、「グループウェア、特にスケジュール機能を携帯端末から利用できるという便利さを実感してもらっている」という。

 携帯電話業界は今、ソフトバンクのボーダフォン買収や2006年秋からの番号ポータビリティ制度(契約する事業者を変えても同じ電話番号を使い続けられる制度)の導入、さらにはアイピーモバイルやイー・アクセス子会社のイー・モバイルの参入など、大きな変化の時期を迎えている。

 このような時期にモバイル事業に参入するのは大きなチャレンジのように見えるが、代表取締役社長の青野慶久氏は「MVNOは利益の出やすい事業だ」と自信を見せる。サイボウズはどういった点に勝機を見いだしているのか、青野氏に話を聞いた。

--数ある携帯電話事業者の中から、ウィルコムをパートナーとして選んだ理由は。

青野慶久氏

  我々は複数の事業者にお話をしたのですが、その中で一番早く決断をいただけたというのが最も大きな理由です。昨年の秋ごろから話をはじめて、3月にはサービスを発表できる段階になりました。

 携帯電話事業者はこれまであまり回線を企業に卸すということをしていなかったので、勇気の要る決断だと思います。その中で、ウィルコムはもともと日本通信にも回線を販売していた実績もあり、我々についても「応援したい」ということで、早く決断をいただけました。

 また、ウィルコムには強い法人営業部隊がいるので、法人向けサービスを提供する上で心強いということもあります。

--ウィルコム以外の通信事業者を今後採用する可能性は。

 他社とは継続して交渉しています。今年中にウィルコムの回線を使って本格的なサービスを開始する予定ですが、そのときには通信事業者が増えている可能性もあります。

--複数の通信事業者でサービスを提供するというのは、運営面の負荷が大きくなりませんか。

 当社の子会社であるインフォニックスは複数の通信事業者の課金代行などを手がけています。ですので、システムや運営の面で特に問題はありません。ただ、各社の端末向けにアプリケーションを開発するとなると、あまり手広くはできないというのは事実ですね。機種が増えることに負荷が上がりますから。

--テストサービスでは、端末のブラウザからサイボウズのグループウェアであるOffice 6にアクセスする形でしょうか。

 はい。今回のテストサービスはアプリは提供せず、ブラウザからアクセスしてもらう形になります。

--2006年秋には契約する携帯電話事業者を変更しても同じ電話番号を使い続けられる番号ポータビリティ制度が始まります。また、携帯電話事業に新規参入する企業も出てきます。年末のサービス開始はこういった動きを見据えたものでしょうか。

 そうですね。ただ、できるだけ早く始めようとしたら、この時期になったというほうが大きいです。

--テストサービスを行う狙いは。

 まず、モバイル通信サービスを提供する際のオペレーションを一通り体験して、ノウハウを蓄えようと考えています。我々には、法人向けに電話を売ることでどんなことが起こるかということがまだ見えていない。それから、顧客のニーズを探りたいということもあります。ですので、今回は参加企業も10社程度に限定しています。

--この10社はどのように選んだのですか。

 既存ユーザーの中で、今まで強いお付き合いがあって、きちんとフィードバックをいただけそうな企業、しかも携帯電話でグループウェアをまだ使っていないところをこちらから選ばせていただきました。

 先進ユーザーだけれども、携帯電話を活用していない企業にお声がけをしました。携帯電話を使っていない理由にはいろいろあって、個人に携帯電話を支給することをためらっているとか、導入する時間がないといったことなどがあります。

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