次世代光ディスクをめぐる争いが激しさを増している。かつて統一規格の実現を模索したBlu-ray DiscとHD DVDの両陣営は交渉が決裂したとして、それぞれの規格をデファクトスタンダードにするべく優位性をアピールしている。
幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2005ではこの2つの規格を推進する業界団体の代表がそれぞれ基調講演に登場した。ここではHD DVDを推進するHD DVDプロモーショングループの講演の模様をお届けする。
MicrosoftのPatrick Griffis氏 |
講演に登場したのは、Microsoft、日立マクセル、東芝エンタテインメント、東芝、NECの5社の代表だ。それぞれの立場からHD DVDに寄せる期待について語った。
先日HD DVDの支持をIntelとともに表明して業界を驚かせたMicrosoftのマイクロソフト・ウィンドウズ・クライアント部門ワールドワイド・スタンダード シニアディレクターのPatrick Griffis氏は、MicrosoftがHD DVDを支持する理由として、以下の6つの点を挙げた。
このうち、3の製造コストに関するメリットについては、ディスクメーカーである日立マクセル ディスク製品事業グループ アドバンスト事業部 設計部 副技師長の田村礼仁氏も賛同の声を上げた。既存のDVD製造ラインをHD DVDの製造に流用できる点はメーカーにとって最大のメリットだという。HD DVDは0.6mmの厚みの基盤を張り合わせた、DVDと同じ構造を採っている。このため、現在DVDの製造に使っているラインを利用してHD DVDの製造が可能になるのだ。なお、対抗するBlu-ray Discは厚さ1.1mmの基板上に記録層を設けて、0.1mmの保護層を重ねる構造になっており、DVDとは構造が異なっている。
また、大容量化に必要な記録層の2層化についても、既存のDVDのノウハウを利用できるため、メーカーにとっては魅力的だとした。
東芝エンタテインメント代表取締役社長の加藤鉄也氏はコンテンツホルダーの立場から、HD DVDの必要性について、HD(高品位)画質の映像に対応するパッケージが必要となっていること、パッケージ市場の活性化が期待できることを挙げた。
日本では2011年に地上アナログ放送が終了し、地上波がすべてデジタル放送になる。つまり、テレビをつければHD画質の映像が誰でも無料で見ることができるようになるのだ。こういった時代が来たとき、「ユーザーがパッケージを購入する場合に、当たり前にテレビで見ている映像よりも低い画質のものを買おうとは思わないだろう」と加藤氏は指摘する。ここにHD画質の映像が保存できる大容量ディスクの必要性がでてくるというのだ。
また、日本では2005年に入ってからパッケージソフトの販売金額がすべての月で前年を下回っており、同じような状況は米国でも起きているという。これは、DVDのタイトル数が増えすぎたために店頭で探しにくく、また新作が目立ちにくい状況になっていることが原因と考えられる。HD DVDを利用したパッケージを市場に投入することで、「DVDに飽きたユーザーを高品質の映像や、インタラクティブコンテンツ、ネットワーク対応コンテンツによって刺激し、パッケージ市場を活性化させたい」と加藤氏は期待を寄せた。
NEC第一ストレージ事業部統括マネージャーの早津亮一氏は、現在のDVDのコンテンツ暗号化技術であるCSS(Content Scrambling System)がすでに破られて海賊版が出回る原因となっていることから、新たな コンテンツ保護技術であるAACSを使ったHD DVDの登場がコンテンツホルダーには待ち望まれていると話す。NECではPC向けのHD DVDディスクドライブを10月後半にも量産する考えで、「今年中にはOEMベンダーから商品が登場するのではないか」とした。
東芝の山田尚志氏 |
また、東芝上席常務待遇デジタルメディアネットワーク社主席技官の山田尚志氏は、HD DVDの規格はリライタブルなHD DVD-RRという規格を除けばすべて規格化が完了していると話し、「今年中にはHD DVDのすばらしい映像を楽しんでいただく環境ができる」と自信を見せた。
なお、同日の基調講演には対抗するBlu-ray Diskの普及団体であるBlu-ray Disc Associationのメンバーも登場する。この講演の内容は追って報告する。
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