11月2日、東芝の液晶テレビ「REGZA F1」シリーズをデザインした、ティモシー・ヤコブ・イェンセン氏が来日し、そのデザインについて話した。
ティモシー・ヤコブ・イェンセン氏は、デンマークでデザイン会社「Jacob Jensen Design」を運営する北欧のデザイナー。父であるヤコブ・イェンセン氏とともに数多くのプロダクトデザインを生み出している。
「私がデザインをはじめたのは16歳のとき。そのとき父は縦の線を書くように指示したが、紙は触らず体で縦の線が何かというものを感じ取って欲しい言った。そこで私は何度も体で縦の線を書き、その後はじめて紙に縦の線を書いた。次に横の線、その次に丸を書いた」(イェンセン氏)と、体感しながらデザインを覚えたと当時を振り返った。
イェンセン氏は、時計やヘッドセットなど数多くのデザインを担当してきたが、中には76回もの修正を加えて完成したデザインもあるという。「毎朝、デザインしたモデルが届くとそれに修正を加えて送り返した。次の日も、また次の日も同様に修正を加えていった。そして76回目の朝、到着したモデルを見ると修正がないことに気がついた」という。
これは25年前に手がけたデザインの話だそうだが、そうした積み重ねは、Jacob Jensen Designのポリシーでもあるという。「例えばトマトスープを作るとする。しかし私たちはスーパーにいってトマトスープを買ってくるのではなく、マーケットにいってひとつひとつ素材を選び、スープを作る方を選ぶ。もし何かを作るのであれば、簡単な方ではなく、難しい方を選べ。それがわたしたちの信じる道だ」。
今回、手がけたREGZA F1シリーズのデザインについても「すべてが難しかった」と言う。なかでも「時間の管理が一番難しかった。物事が早く動きすぎた」とし、スピード感をもって作り上げていったことがうかがえる。しかし「難しかったからこそ、(F1シリーズという)素晴らしい赤ちゃんができた。困難を乗り越えて出てくる子供たちがよければハッピーになれる」と話した。
東芝では「すでにイェンセン氏との次のステップも考えている」としており、次期モデルで新たなJacob Jensen DesignのREGZAが登場する可能性もあるとしている。
デンマークに事務所を構え、自然の中で暮らしデザインを手掛けるイェンセン氏と、東京に拠点を持つ東芝。イェンセン氏は「全く違う世界にある会社とのコラボレーション」と言い、この仕事の話しが来たときは「とてもうれしい話がきたと思った」と、思い返す。
日本製品をデザインすることについて聞くと「日本には素晴らしい技術、可能性、文化がある。それに気づき、取り上げていくのは日本人よりも海外にいる自分たちのほうが得意かもしれない」とコメントした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」