Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編) - (page 2)

Netscape 対 Google

 NetscapeがWeb 1.0の旗手だったとすれば、GoogleがWeb 2.0の旗手であるこ とに異論の余地はないだろう。両社のIPOは、それぞれの時代を象徴する出来 事でもあった。まずは両社とそのポジションの違いを比べていこう。

 Netscapeは古いソフトウェアパラダイムの観点から、「プラットフォームと してのウェブ」を構想した。Netscapeの最も重要な製品はウェブブラウザとデ スクトップアプリケーションだった。同社はブラウザ市場での優位を利用して、 高額なサーバ製品の市場を確立しようとした。同社はコンテンツとアプリケー ションをブラウザに表示するための標準を支配していたので、理屈の上では、 MicrosoftがPC市場で享受しているのと同じ市場支配力を手に入れることがで きるはずだった。「馬なしで走る乗り物」という表現が、馬車に親しんできた 人々に自動車を身近なものと感じさせたように、Netscapeはデスクトップに代 わるものとして「ウェブトップ」を推進した。このウェブトップにNetscapeサ ーバを購入した企業が配信する更新情報やアプレットを載せる、というのが Netscapeの計画だった。

 しかし、ウェブブラウザとウェブサーバはコモディティ化し、価値は「スタ ックの上流」、すなわちウェブプラットフォーム上で提供されるサービスに移 ってしまった。

 Netscapeと対照的に、Googleはネイティブのウェブアプリケーションとして 誕生した。Googleはソフトウェアを販売したことも、パッケージソフトウェア を開発したこともない。Googleはサービスを提供し、顧客は直接的または間接 的に、サービスに対する使用料を支払う。Googleには過去のソフトウェア業界 を象徴するようなものは何もない。ソフトウェアのリリース計画はなく、改善 は継続的に行われる。ライセンス供与もなければ、販売もなく、使用量がある だけだ。顧客の環境に合わせて、ソフトウェアをさまざまなプラットフォーム に移植する必要もない。大量のコモディティPCを使って、きわめて拡張性の高 いシステムを構築し、門外不出のカスタムアプリケーションとユーティリティ を、オープンソースOSの上で走らせるだけでよい。

 Googleに必要なのは、Netscapeがまったく必要としなかった能力である。そ れはデータベース管理だ。Googleは単なるソフトウェアツールの寄せ集めでは なく、非常に特殊なデータベースである。データがなければ、ツールは役に立 たないが、ソフトウェアがなければ、データを管理することはできない。Web 1.0時代に重宝されたソフトウェアライセンスやAPI管理といった手法は、同社 のビジネスモデルにはあてはまらない。Googleはソフトウェアを配布する必要 はなく、それが適切に機能するようにすればよいからだ。実際、データを収集 し、管理する能力がなければ、このソフトウェアは何の役にも立たない。 ソフトウェアの価値は、そのソフトウェアが管理するデータの規模とダイナミ ズムに比例する。

 Googleのサービスは、大量のインターネットサーバで構成されたシステムを 通して提供されるが、Googleのサービスはサーバではない。ユーザーはブラウ ザを通してGoogleのサービスを利用するが、Googleのサービスはブラウザでは ない。Googleの基幹事業は検索サービスだが、同社は検索結果に表示されるコ ンテンツすら所有していない。通話が発信者と受信者の電話機だけでなく、そ の間のネットワークで起きるように、Googleのサービスはブラウザ、検索エン ジン、そして目的のコンテンツが保存されているサーバの間で生じ、Googleは ユーザーとオンラインでの経験を結び、仲介する役割を果たす。

 NetscapeとGoogleはどちらもソフトウェア企業と呼ぶことができるが、 NetscapeがLotus、Microsoft、Oracle、SAPといった1980年代のソフトウェア 革命から生まれた企業と同じソフトウェアの世界に属していたのに対し、 GoogleはeBay、Amazon、Napster、そしてもちろんDoubleClick、Akamaiといっ たインターネットアプリケーション企業と同じグループに属している。

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