ターニングポイントを迎えるモバイルサービスの決め手 - (page 2)

携帯電話で成功するキラーサービスは

 自社を「モバイル界でのロケーションベーストサービスソフトウェアカンパニー」と定義するWaveMarketのタッソー氏は、米国におけるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)とモバイルの関係を紹介した。

 「SNSユーザーは、ほかのサービスへ容易に乗り換える傾向がある」とタッソー氏は語る。自社の調査結果では、SNSユーザーの71%が「よりよいパーソナライゼーションとメッセージ環境があれば、2人の友人から誘われた時点でほかのSNSへ乗り換えることを検討する」という。つまり、モバイルSNSは新規参入組にとっても大きなチャンスがあるということだ。

 モバイルユーザーとPCユーザーの違いは、モバイルユーザーの60%が「今どこで何をしてるのか」という、ロケーションと縁が深いメッセージを発することだという。こういった調査結果を踏まえたのがキャリアを横断したモバイルSNS「StreetHive」。友人捜しとメッセージ交換、モバイルブログサービスを提供する。位置情報と時間に対する機敏さが特徴で、例えばクラブやレストランの混雑状況やパーティの内容なども知ることができる。
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携帯電話市場に関して日米の違いを説明するWaveMarketのタッソー氏

 モバイルサービスを提供するうえで、避けて通れないのがキャリアとの関係だ。タッソー氏によると、米国においても日本と同様に、キャリア側がゲートウェイに関してのコントロールをしたがる傾向にあるという。米通信会社は、イノベーティブで優れたユーザーエクスペリエンスを提供する中規模の、キャリアの経済的脅威とならない企業と提携する方針だ。「例えばGoogleにとってモバイルは戦略的に見て大きな分野であるとは思うが、キャリアはGoogleといっさい取引をしていない」と、タッソー氏は語った。

 さらにタッソー氏は、米国でモバイルサービスを広げるためのハードルとして「利用環境の違い」を挙げた。日本の場合は、それに加えて「モバイルをマス的に捉えた広告利用としてのサービスが生まれていない」と外川氏は語る。よりクライアントに使ってもらえるようなメニューを作らなければ、会員を取得するには不十分であるとの認識だ。

 さらに、現在モバイル市場で各社が力を入れる「ポータルサイト」の展開についても意見が交わされた。PCではポータルサイトが隆盛を極めた次のステップとして「検索」に注目が集まったが、携帯電話において次のキーワードは何か。また、PCと携帯電話の両方で閲覧できるXMLを利用したウェブコンテンツが増えれば、わざわざ携帯電話用のコンテンツを作る必要がなくなり、フルブラウザの必要性が希薄になるのではないか、とういう考え方もある。

 こうした問いに対し、福野氏は「検索とフルブラウザは、密接に関連している」との見解を示した。携帯電話で検索した時にヒットしたコンテンツがPC用しかなければ、フルブラウザを使わざるを得ない。また、PCに特化したプロモーションサイトでも携帯電話からのアクセスが相当集まったことを考えると、PC用コンテンツは携帯電話でも活かすべきだと考える。福野氏は、コンテンツマネジメントシステムを利用したウェブサイトのXML化と、携帯電話向けコンテンツを出力するシステムの普及を熱望した上で、「XMLにすることにより、必ずしもすべてが変わるわけではないので、フルブラウザと携帯電話サイトを両方使い分けながらウェブサイトを利用することで、携帯電話ユーザーの領域が広がる」との見解を示した。

 外川氏は、モバイル市場における今後のポイントとして「検索」を挙げた。外出時に検索を利用したくても、現状では目的の情報が見つかりにくいためだ。ウェブサイトのXML化に関しては、PCのインターフェースに慣れ親しんでいない携帯電話ユーザーにとって、どれくらいユーザビリティのあるインターフェースを提供できるかが鍵であると考える。

 こうした中で、逆に米国においては携帯電話による検索が重要視されていない。WaveMarketのリサーチで、携帯電話で実現させたい項目として挙げられたのは、「メッセージング」と「プッシュベースによる情報の取得」で、検索は皆無だった。タッソー氏が考える次のステップとは、「パーソナライゼーションを加えたポータルサイトと、モバイル上のRSSを駆使してワンクリックで情報を取得できることだ」という。日米のモバイルマーケットにおける方向性の違いが浮き彫りになったかたちだ。

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