最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

広告会社は誰を代理するのか

横山隆治(ADKインタラクティブCOO)

2007/10/15 11:30  

 前回のこのコラムで、「新しい企業体に広告業界全体の生き残りを託すべきである」と書いた。

 もう少し詳しく説明する。既存の広告会社にも次世代対応の潜在力をもった人材はたくさんいる。しかし、彼らを既存の仕組みのなかで次世代型に育成するのは至難の技だ。従来モデルがまだまだ収入の大半なのだから、従来の仕組みを壊してしまうことはできない。かといって、その枠組みの中では次世代の人材はやはり育たない。

 対応できる人材を、今勇気をもって分離し増殖させないと、次世代シフトすなわち広告会社のビジネスリモデルはできない。これは経営手法論ではなく人材育成論である。

 現状、広告会社のメディアマージンは年々厳しくなっている。一方でオペレーションコストは上昇圧力が強い。広告業界は儲からない、つまり大した年収を社員に払えない業界になっていく。しかし、私は広告業界が広告主に提供している価値が小さくなっているとは全く思わない。我々は広告主から、提供しているサービスに見合った対価をしっかり獲得すべきである。そのためのビジネスリモデルでもある。この経営環境の変化を機に、広告主にとっても納得のいく、広告業界にとっても提供する価値に見合った対価を得るビジネスに再編をかける必要があるのだ。

 さて、広告会社のビジネスリモデルのもうひとつの非常に重要な視点は、「今後広告会社は誰を代理する業態であるか」である。広告会社は広告主に対して「メディアニュートラルなキャンペーンプランニングを提供する」と標榜するものの、一方でメディアスペースを買い切っている。日本の広告会社のおもしろいところは、メディアレップとクライアントレップの両方をこなしているところである。

 しかし、これができるのはほとんどのキャンペーンプランニングがマス広告枠への出稿というアウトプットであったことと、マス広告枠が有限なスペースとして囲い込みが可能であったからである。企業にとってウェブサイトが自社メディア化し、生活者との接点(コミュニケーションチャネル)がマス広告ばかりではなくなると、本当にメディアニュートラル、ソリューションニュートラルな提案が求められる。

 これに対応するにはまさに100%クライアントをレップするスタンスをとらないと無理である。また、そうでないとプランニングや実施運営に価値の高いフィーを獲得できない。次世代広告へのビジネスリモデルでは、このメディアレップとクライアントレップをビジネス上はっきり分離することが重要である。

 欧米は、同業他社のクライアントとは契約しないビジネス文化のもと、ブランドエージェンシーとメディアエージェンシーを機能分社し、後者は規模の論理を追及することで持ち株会社傘下に複数のブランドエージェンシーとメガメディアバイイング会社という企業グループを作り出した。

 日本では、もともと完全AE(アカウント・エクゼクティブ)制の文化はないが、今後消費者接点(コミュニケーションチャネル)がマス広告枠だけでなくなることで(本当にメディアニュートラルな提案をせざるを得なることで)、メディアレップとクライアントレップの分離を考えない訳にはいかなくなる。

 ついでにいうと、100%クライアントをレップするスタンスを確立する、つまりプロのコンサルティングパートナーとなるためには、今のように広告主の言うことを忠実に聞くばかりではビジネスは成立しない。プロとしてのリコメンドをしっかりできないと存在意味はない。そしてプロとしてのリコメンドができるか否かは、最終的には広告会社が消費者、生活者をレップするスタンスをとれるかどうかにかかっている。真に「クライアントのため」とは、そこに「ユーザーのため」も両立させていなくてはいけない。この作業が我々の商売ということになるのかもしれない。

 また、このスタンスをより強固にもつには(しっかりした対価=フィーを獲得するには)、ある意味、いくばくか結果責任をもつくらいの考え方(成功報酬型ビジネスモデル)も必要だ。

 そしてフィーをしっかり払っていただくためには、やはり「別途メディアで儲けますから」が通じにくくなる訳で、従来のメディアバイイングビジネスとは一線を画す覚悟がいる(もうひとつはAE代理店のポジションを獲得すること)。

 私は、かれこれ11年インターネット広告を売る立場にいるが、今後特にメディアニュートラルにクライアント及びユーザーをレップするスタンスで提案していくだろう。なぜなら、それがネット領域のシェアを上げる一番の近道だからだ。生活者への接触シェアに比べ、実際の広告市場がまだ圧倒的に小さいネット広告領域だからこそ、メディアニュートラルを貫けば、ネット領域は自然と増える。「100%クライアントのためを貫くことでネット広告を拡大する」これが私の戦略である。

横山隆治
株式会社アサツーディ・ケイ
執行役員 ADKインタラクティブCOO

青山学院大学文学部英米文学科卒。1982年に株式会社旭通信社入社。営業職を経て、1996年同社サイバービジネス開発室室長。同年デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社の設立に参画。設立時に同社代表取締役副社長に就任。黎明期にあったネット広告の普及、体系化、理論化に取り組む。JIAA(インターネット広告推進協議会)のガイドライン作成や新人研修テキストなどの多くを執筆するほか、著書多数。2006年7月からADKインタラクティブCOO兼デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社取締役。「インターネット広告革命」(2005年宣伝会議)、「Mobile 2.0」(2006年インプレス)、「究極のターゲティング」(2006年宣伝会議)、「次世代広告コミュニケーション」(2007年翔泳社)など。

特集

「ソーシャルメディアキャンペーン」の半数は失敗--アナリストが指摘する理由
多くの企業がソーシャルメディアキャンペーンを計画している。しかし、ガートナーによると、キャンペーンを始める理由が明確になっていなければ、失敗に終わることになるという。
人工知能による会話マーケティングの可能性
日産NOTEのウェブサイトがおもしろい。人工知能を用いて、ユーザーの質問にCMでおなじみのキャラが反応してくれる。裏側で実現しているのは、PtoPAが開発したソフトウェア「CAIWA」だ。同社はこれをウェブマーケティング分野でも活用しようとしている。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能
近年のウェブサイトリニューアルプロジェクトでは「ユーザビリティテスト」を実施することが当たり前になってきたようです。今回は、単なる「使いやすさ調査」を超えた「ユーザー行動観察調査」の効果・効能を紹介します。
“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」
香港や中国のケータイショップでは、「おぉっ!こりゃかなりいける!」とワクワクしてしまう怪しいトンデモケータイに出会うことがある。そんな魅力あふれる製品の1つが、今回ご紹介するケータイである。
ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念
日経平均が約4年10カ月ぶりに1万円の大台を割り込む中、ソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。

企画特集

ネットと家電をつなぐチャレンジ「Life-X」
第一題:ライフログ・シェアリングサービス「Life-X」の第一印象は?
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第2回】メーカー/占いのコンテンツを作ってみた!

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

おやじのちょっとユビキタス東芝からネットブック
おやじのちょっとユビキタス
電子政府パブリックコメントの抜粋2010 年代の電波政策(意見募集)
電子政府パブリックコメントの抜粋
ナチュラルケアーズがITを使ったらナチュラルケアーズを美容系ポータルサイトに登録
ナチュラルケアーズがITを使ったら
高校生サーバー管理者の考察日誌「ブラッディ・マンデイ」を考察する
高校生サーバー管理者の考察日誌

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

金融不安の市場に、IR活動は何を頼るか!?
CMS未導入企業300社へのアンケート 担当者のホンネを徹底追求

■調査発表

【ゲームクリエイターの方へ】攻めの開発体制を敷くAQインタラクティブ社の中途採用・求人情報をレポート
Alibaba JAPAN、カー用品店に関する調査 カー用品専門店の認知、利用ともトップは「オートバックス」
調査結果「携帯OS『Android』認知度調査、6割が『知らない』 〜ユーザー期待のメーカーは?」

イベント情報

Microsoft Windows SharePoint Services 3.0によるチームサイトの構築
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft .NET入門
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft SQL Server 2005 インフラストラクチャの設計(#4612)
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

自動車の未来を垣間見る--2008年パリモーターショーのコンセプトカー

2008年度グッドデザイン賞が発表--環境を意識した新基準も

GMのハイブリッドカー「Chevrolet Volt」、パリモーターショーに登場

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。