今週ロサンゼルスで開催されているElectronic Entertainment Expo(E3)で、次世代ゲーム機が続々と発表されている。マルチコアCPU搭載、ネットワーク常時接続、ハイビジョン映像対応と、PCを凌駕するほどのスペックが明らかにされるにつれて、そのターゲットが必ずしもゲーマーだけではないことが明らかになってきた。家電やPCと連携する機能を標準搭載した次世代ゲーム機の登場は、現在静かに水面下で進行しつつある放送・通信・家電の融合においてどのような意味を持つのだろうか。
劇場映画クオリティのオープニングムービー
先週マイクロソフトとMTVのジョイントイベント「次世代 Xbox プレビュー」に行ってきた。あまりゲームに縁のない人間ではあるのだが、今回は特別だ。というのも、プレビューで公開されたXbox 360向けゲームタイトル『NINETY-NINE NIGHTS』のプロモーション及びオープニングムービーを僕の会社であるシンクがプロデュースしているからだ。
『NINETY-NINE NIGHTS』はマイクロソフトの自社ブランド「Microsoft Game Studios」からリリースされるが、実際にはゲームプロデューサーの水口哲也氏率いるキューエンタテインメントと韓国のPhantagramとのコラボレーションによって制作されている。プレビューイベントの壇上で水口氏は『NINETY-NINE NIGHTS』を「さまざまな文化的背景を持った多数のキャラクターの視点から描かれるマルチアングルのサーガ(叙事詩)」と表現していたが、オープニングムービーの制作でもさまざまな分野からトップクリエーターたちが集結している。
ハイビジョンクオリティのプロモーション/オープニング映像のCGシーン制作は、CMなどの制作で知られる日本のトップCGスタジオのひとつであるアニマロイドとフランス出身のクリエーター集団であるAOKIが担当。監督は日本実写映画における特撮分野の第一人者である古賀信明。そして、「ほしのこえ」や「THE ANIMATRIX」などの先端アニメ作品の仕掛人として知られる竹内宏彰と韓国出身の宋美善がシンクからプロデューサーとして参加し、米国のPhuuz Entertainmentのスタッフとともにロサンゼルスで最終的に1本の映像にまとめ上げた。
増大するコストとプロセス
制作スタッフによると、劇場映画クオリティのオープニングを作るにあたって、Xbox 360のゲームシーンがハイビジョンクオリティであるために、この2つの差別化に苦労したという。これまでのゲームのようにオープニングとゲームシーンの画質がまったく異なるという時代ではなくなってしまったのだ。ゲームといっても次世代ゲーム機向けタイトルは、プレビューで水口氏がいみじくも繰り返したように、もう「映画並み」になってしまっている。そのため、実際の制作もほぼ映画並みの人員と作業、工程が必要になっており、これまで通りのやり方では通用しなくなってきている。今では、クリエイティブなゲーム制作にもシステマティックなアプローチが不可欠になりつつあるのだ。
もちろんその制作コストも大きなものとなっていくし、また多様化・細分化した作業をまとめていくプロジェクトマネジメントスキルもきわめて高いものが要求されてくる。現行世代のゲーム機が登場した時点でも、タイトル制作に必要なコストの大きさから参入できる企業が限定されてしまうという指摘がなされていたが、更なるハードウェアのスペック進化はそんな状況を加速しているに違いない。
と同時に、「高度化・複雑化しすぎたゲームタイトルは一般ユーザーにとって敷居が高すぎて、結果的にゲーム離れを引き起こしている」という指摘にも策を施す必要がある。ハイビジョンクオリティの魅力ある映像はぴったりの施策になるであろうし、ネットワーク化によるユーザーフレンドリーな要素の追加も効果的だろう。
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