2009年のベンチャー市場は暗い1年となった。IPO市場が歴史的に低迷し、株価も下落。ただ、新星の躍進や年後半の復活組の活躍など、明るい話題も提供し、株式市場全般に一定の貢献をした。
2009年のベンチャー市場におけるMVP銘柄は間違いなくグリーだろう。2008年12月に株式公開。近年のネット系ベンチャー企業としては巨額の133億円を調達した。初値は公開価格を52%上回る5200円。2009年初に5000円近辺だった株価が株式分割直前の9月末には1万円に到達。11月に株式売り出しを実施して需給関係が悪化したが、それでも年間を通して美しい上昇トレンドを描いた数少ない銘柄として多くの投資家に愛された。
グリー株の上昇を支えたのは圧倒的な業績成長力。2010年6月期業績計画はすでに増額修正されており、非連結売上高で前期比94%増、経常利益は同66%増と高成長見込みだ。為替市場や世界景気の変動に大きな影響を受ける企業が多い中、それらをものともしない業績成長を続ける一番星として人気を集め続けた。
そのグリーが2008年末に株式公開して以降、IPOマーケットは開店休業状態に陥った。2009年の新規上場銘柄数はたった19社。上場した多くが医薬品など景気動向の影響を受けにくいディフェンシブな業態で、純粋なベンチャー企業の上場は少なかった。
中でひときわ輝いたのが料理レシピ投稿サイト運営のクックパッド。7月17日に東証マザーズへ新規上場した。初値が公開価格比2培超の1万9100円となり、その後は3万9100円まで上昇。初値を高騰させた新規上場銘柄がセカンダリー(流通市場)でも初値比2倍以上に上昇するのは非常にまれ。700万人の主婦を会員に抱えるユニークなネット企業として評価され、上場後はモバイル向け有料会員の急速な伸びが材料視された。ただ、株式分割と好業績が発表されて以降は株価の割高感もあって上値の重い展開。今後、更なる業績成長シナリオを株式市場に示し、割高感を吹き飛ばすような展開が期待される。
そして年末相場を彩ったのは「モバゲータウン」のディー・エヌ・エー(DeNA)、「mixi」のミクシィ、「アメーバブログ」のサイバーエージェントといった、一度は株式市場の信頼を失い、評価を下げていた銘柄群の復活高だった。DeNAは海外展開を、ミクシィはソーシャルアプリプラットフォーム「mixiアプリ」のヒット、サイバーエージェントは仮想空間サービス「アメーバピグ」の立ち上がりが、それぞれ株式市場で材料視された。ファンドによる買い付けも材料となったサイバーエージェントを中心に株価も上昇し、年末に掛けては全上場企業の売買代金ランキングトップテンに入る活況ぶりとなっている。価格比較サイト運営のカカクコム、仮想商店街運営の楽天なども見直す動きが先行している。
トータルすれば2009年は暗い1年であることは間違いない。IPO銘柄数が大幅に減少したことで、新興市場には停滞感が強まり、空洞化への懸念も強まっている。景気悪化による企業業績の悪化や上場審査の厳格化を背景に、急速な市場回復は期待しにくい状況にある。2008年、2009年と厳しい事業環境下でベンチャー企業の淘汰も進んだ。一方で勝ち残った企業は痛みに耐え、強さを増しており、新たな成長ステージに入ってきたものも多い。
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