携帯電話組み込みソフト開発のACCESSの株価が1年ぶりの低水準まで下落している。12月10日以降、3営業日連続で年初来安値を更新した。ライブドアショック後の新興市場を支えてきた銘柄だが、実態面の悪化もあって存在感も低下傾向にある。
ACCESSは12月10日、2010年1月期第3四半期決算を発表した。連結売上高は前年同期比13.7%増の155億5700万円となったものの、経常損益は58億5300万円の赤字(前年同期は39億3700万円の赤字)、最終損益は39億600万円の赤字(同27億6700万円の赤字)となった。収益回復が期待される中での赤字幅拡大決算は、株式市場に大きな失望感を与えた。
赤字幅の拡大はNTTドコモ向け請負開発で想定以上の開発コストが発生したことが背景。ACCESSの受託開発案件の大半はNTTドコモ向けが占めていることから、今後も粗利益率の改善は期待しづらい状況にあるとみられる。会社側では1月期通期で売上高304億7300万円(前期比2.2%増)、経常利益30億円(同40.3%増)、最終損益18億8900万円(同2.2倍)の計画を据え置いているが、計画未達への懸念も高まってきている。
株価は取引終了後に決算発表を控える12月10日から下落。これはシティグループ証券が決算発表をプレビューする格好で同日付でリポートを作成して投資判断を引き下げたことが背景。投資家に対して警鐘を鳴らしていた。警戒感が高まって株価は11月18日に付けた年初来安値16万5500円を更新。そして実際に会社側から開示された決算数字に失望する格好で12月11日は一時、値幅制限いっぱいとなるストップ安まで売られた。株価は心理的な節目とみられていた15万円をあっさりと割り込み、2008年12月以来の水準まで下落している。
想定以上の業績悪化を受けてアナリストの評価も低下。プレビューリポートを作成していたシティグループ証券が決算発表後にもネガティブなリポートを作成したほか、同社株をカバーしていた多くの証券会社が投資判断を引き下げている。最終四半期には一括払いのロイヤルティ収入が計上される見込みであるため大幅な計画未達には及ばない模様だ。来期はNTTドコモ向けの受託開発案件が通期で寄与するため、収益規模が拡大する見込みではあるが、中期的な成長には新規案件の獲得などが必要になってくるため、見通しは決して明るくはない。
ACCESS株は、2006年1月にライブドアが株式市場を去って以降、マザーズ市場の時価総額トップとして全般相場をけん引する動きが期待された銘柄。ソフトウェアセクター、また新興市場では数少ない、世界で活躍する企業でもあり、一部では「モバイル業界のマイクロソフト」とまで呼ばれた企業だった。業績面の苦戦から時価総額は減少し続け、新興市場の主役もサイバーエージェントや後から株式公開したミクシィ、グリーなどに譲っている。通期業績計画の未達懸念を抱えることから悪材料が出尽くすような商状も期待しづらく、当面は軟調な推移が継続しそうだ。
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