楽天株が地力を発揮し始めた。2009年12月期第3四半期決算発表を受けた11月13日の取引で全般相場に対して逆行して上昇し、年初来高値を更新。2006年8月以来の7万円台回復に肉薄した。小型株市場は個人投資家の投資意欲低下などを背景に売り優勢の展開が継続しており、数年来の高値水準まで値を戻してきた楽天株の強さが際立ってきた。
楽天が11月12日の取引終了後に発表した1〜9月決算は、連結売上高が前年同期比17.8%増の2170億4900万円、経常利益は同28.5%増の373億6400万円、特別損失負担の軽減した最終利益は同3.5倍の474億3600万円となった。
主力のEコマース事業で流通総額が前年同期比20%増の高水準の伸び率をキープ。大手店舗や地方店を取り込むなど、営業面で取り組んできた施策が流通総額に寄与し始めている。クレジットカードや証券など金融系事業もこれまで行ってきた事業再構築の効果が出ており、収益貢献度が上昇。トラベルやプロスポーツなどの事業も拡大して、主力のEコマース事業とのシナジー効果が大きくなってきている。
楽天は業績予想を開示していないため、期初予想や通期計画との比較はないが、業績数字はアナリストによる事前予想を上回っている。欧州系のUBS証券では11月13日付のサマリーで目標株価を7万1000円から7万7000円に引き上げた。Eコマース事業での流通総額の伸び率を「同社にしか維持できない異常な巡航速度」と評価。トラベル事業、金融事業の拡大ピッチも想定を上回ると指摘している。一方、シティグループ証券では店舗あたり収益のマイナス傾向を懸念材料としてあげており、売り上げウェイトの高い最終四半期(10〜12月)の数字次第では来期業績に成長が不安視される可能性があるとしている。
株価は決算発表前に動意。11月10日に一時値幅制限いっぱいとなるストップ高まで買われるなどして7月に付けた年初来高値を更新していた。好決算発表への期待感は従前から高かったが、実際の決算はその期待値を上回った。11月13日の上昇で2008年5月の高値6万7600円や2007年1月の高値6万7500円も一気に更新。3年以上滞在してきた7万円を上限とするモミ合いレンジから上放れた格好となっており、中長期的な視点から見た株価チャート上の妙味も非常に高まっている。
楽天は新興市場を代表する銘柄。しかし楽天株の見通しは明るいものの、小型株市場全体では個人投資家などの投げ売りを浴びて指数が連敗記録を連日更新するなど、厳しい状況が続いている。そのため同銘柄には小型株相場全般の起爆剤として相場反転をけん引する動きが期待される。
しかし実際は、小型株相場全般の弱さに飲み込まれずに独自展開をすることも難しい状況。新興市場に単独上場する銘柄の中では最大の時価総額を誇り、多くの個人株主を持つだけに、痛んだ投資家による現金化の動きが出てくると業績絶好調の楽天株でさえ軟化する可能性がある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」