キヤノンは、1月28日に、2009年12月期の連結営業利益(米国会計基準)が1600億円(前期比67.7%減)、純利益が980億円(同68.3%減)という大幅な減益見通しを明らかにしたことから、これを嫌気して株価も下降トレンドを辿っていた。しかし、3月11日に開催した投資家向け経営方針説明会で会社側が、安定配当維持の意欲を示したことなどから、株価反転上昇の期待が高まってきた。
3月11日、キヤノンは毎年恒例の投資家向け経営方針説明会を開催した。来期に当たる2010年12月期を最終年とする中期経営計画(連結収益計画)を見直し、従来予想の売上高6兆円を3兆7000億円(今期予想比6%増)、同純利益6000億円を1500億円(同56%増)へと目標数値を大幅に下方修正した。大幅な下方修正を余儀なくされたのは、昨年秋以降の世界的な景気後退や円高などによる急激な経営環境の悪化による。
同社は100年以上繁栄し続ける企業を目指し、1996年から「グローバル優良企業グループ構想」を推進してきた。その一環として2010年12月期を最終年とする経営目標を設定していた。
今後の経営戦略について御手洗冨士夫会長は、2009年の業績を大底に10年までの2年間で徹底的な効率化、自動化や内製化によるコストダウン、消費地生産、世界販売体制の強化を実施する。また、右肩上がりの市場前提でなくとも様々な環境に対応できる新の意味での筋肉質の企業体質を目指すとしている。
さらに、株主還元策については「出来る限り安定配当を維持したい」と改めて強調しており、減配しない条件として2009年の黒字維持、2010〜11年について増収増益の可能性が見えてくることを上げている。同社の配当は年間110円で、先週末3月19日の終値2685円で試算した配当利回りは4.09%と4%台に乗せる高水準となっている。
さらに、内田恒二社長は、今後の事業戦略について、既存事業を強化して圧倒的ナンバーワンを堅持することに加え、多角化やIT革新による効率化、知的ロボットなどの新たな中核事業の育成などを挙げている。
キヤノンは、今12月期の連結業績予想で営業利益1600億円(前期比67.7%減)、純利益980億円(同68.3%減)という大幅な減益見通しを明らかにしている。この背景にあるのは、欧米など海外での複写機などオフィス向け事務機器部門の売上高が現地通貨ベースでは前期並みを想定しているものの、円高を想定しているため減益幅が広がる見通しという。
今期の想定為替レートは、1ドル=90円、1ユーロ=120円としている。現状の円相場は1ドル=95〜96円水準の推移となっている。もし、実際の為替レートが、想定に比べ円安水準での推移となれば、業績上方修正の可能性も出てきそうだ。
また、キヤノンは2009年の中国での売上高を前年比20%以上伸ばす計画を明らかにしており、デジタルカメラや複写機の売上高が予想を上回った場合、これも業績上方修正につながる可能性がある。
同社の株価は、1月7日の高値3370円から下落トレンドを辿り3月9日には2115円の安値を付けた。その後反転上昇の兆しをみせはじめ、先週末3月19日終値は2685円まで上昇をみせている。
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