先週の東京株式市場では、トヨタ自動車が2009年3月期の連結営業利益(米国会計基準)を従来予想の1兆6000億円から1兆円の大幅減額修正を発表、6000億円(前期比73.5%減)に落ち込むと発表したことで、“トヨタショック”が走り、週前半の2日間で944円高と大幅高した日経平均株価は、後半の2日間で938円安する逆戻りの暴落相場となった。
この大幅減額修正で、最大の減益要因となったのが円高による為替差損で、6900億円(前期比)に達するとしている。このトヨタに限らず、急激な為替の円高進行と大手自動車、電機、精密機械など主力輸出企業は、9月中間期決算の発表に伴って、軒並み今3月期通期の業績予想を大幅に減額修正している。
こうした輸出企業にとって非常に厳しい環境の中にあって、9月中間期、3月期通期の営業利益をともに上方修正したのが日立製作所だ。同社の収益改善の背景と今後の株価動向を探った。
日立は、10月30日の9月中間期決算の発表に先立って同24日に、同中間期の営業利益(米国会計基準)を従来の1250億円から1970億円(前年同期比62%増)へと大幅に上方修正した。
自動車用の電子部品が伸び悩んだものの、これまで大幅赤字の継続だったハードディスク駆動装置(HDD)事業が黒字に転換したのに加えて、重電部門の好調も寄与した。
また、今期通期の営業利益についても、従来予想の3800億円を4100億円に上方修正した。
大幅な増額修正の一番の要因となったのは、これまで長期間にわたって赤字継続を強いられてきたHDD事業が、原価低減や新製品の貢献などにより黒字化し、9月中間期の営業利益で前年同期比513億円の増益要因となったことだ。
さらに、情報通信システム部門は、ソフトウェアがミドルウェアを中心に好調に推移したのに加え、システムサービスでも金融機関向けを中心としたシステムインテグレーションやソフトウェアやアウトソーシング事業も堅調に推移した。また、ハードウェアも通信ネットワークやATM(現金自動取引装置)が伸長した。
さらに、重電部門で、環境負荷を従来に比べて軽減できる石炭火力発電設備の海外での売上増加や、鉄道車両システム、昇降機、日立建機などの好調も寄与した。
この結果、同社は2009年3月期の通期連結業績について売上高10兆9000億円(前期比2.9%減)、営業利益4100億円(同18.7%増)を見込んでいる。下期の為替レートは1ドル=100円、1ユーロ=130円としている。
同社の株価は9月半ばのリーマン・ショック直前の700円台半ばから、全体相場の急落に連動して下落を強いられ、10月28日には393円の年初来安値をつけた。しかし、10月30日の9月中間決算発表を境に反転上昇に向かい、現在ほぼ500円水準まで引き戻している。さらに、直近の10月31日申込現在の東証信用倍率は0.79倍と売り残が買い残を大きく上回っている。
一般的に国際優良株といわれる、自動車、電機、精密機械の主力大型株のほとんどが深刻な業績下方修正を迫られている中で、日立の業績好調ぶりは特筆すべきといえる。株価は早い時期に700円台回復を果たすことも十分期待できそうだ。
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