ソニーが先週20日に、2005年3月期の連結業績見通し(米国会計基準)を下方修正した。連結営業利益ベースで従来予想の1600億円を500億円下回る1100億円(前期比11%増)とする大幅な減額修正となったため、市場の一部には“2003年春に起きたソニーショックの再来”を懸念する見方もあったが、翌日21日の株式市場では、ほかの主力ハイテク銘柄へのマイナス波及はほとんどみられず、「ソニーのひとりミニショック状態(一時、前日比190円安の3760円まで売られ、終値は同120円安の3830円となった)」(市場関係者)に終わった。外国証券のアナリストからは「ソニーはもはや、その動向が日本のハイテク企業全般の株価に大きな影響を与えるような特別な存在ではなくなったことの証拠。一抹の寂しさは禁じえないが、ソニー神話復活への幻想を抱く市場関係者がなくなりつつあるということだ」としている。
ソニーでは、今3月期の連結営業利益が従来予想に比べて500億円減額の見通しとなったのは、デジタル家電の競争激化から価格の低下が響き、エレクトロ二クス部門の売上高、利益が想定を下回る見込みにあることが主因としている。ただ、純利益については、米国子会社の採算改善による繰延税金資産の利益計上や、欧州の携帯電話会社など持ち分法適用会社の業績好調などから、逆に従来予想に比べて400億円増の1500億円(前期比69%増)と上方修正している。
今回の業績下方修正の要因をひとことで表現すると「ソニーブランドのプレミアム低下傾向に歯止めがかからず、実際の販売価格の低下で利益が大きく圧迫された」ということになりそうだ。とくに、主力のエレクトロニクス部門でブラウン管テレビ、薄型テレビ、DVD(デジタル多用途ディスク)レコーダ、ビデオカメラなどの販売価格が大きく下落している。
準大手証券のアナリストは「ソニーにも、DVDレコーダのスゴ録や携帯ゲーム機PSPなど、それなりのヒット商品は出しているのだが、往年のウォークマンのような、現在でいえば米アップルコンピュータのiPodにあたる超大型ヒット商品がもう何年も出ていないことに尽きる。一般消費者のブランドへの受け止め方のなかには、商品への基本的な機能、品質への信頼はもとより、ソニーに対して日本人として「世界に誇れる超大型商品を出してほしい」という期待を持ち続けていたが、これにこたえていないということだ。これがソニープレミアムのはげ落ちを加速しているのではないか」と指摘している。
また、今回のソニーの業績下方修正について、ゴールドマンサックス証券は20日付けのレポートで「想像以上の下方修正幅であること、予想以上の単価ダウンは来期以降も続く可能性があること、新たな施策が発表されなかったことなどから、ネガティブサプライズだった。ただし、3月末償還のCBのヘッジ取引の影響で、ごく短期的には株価のダウンサイドは限られる可能性があり、ニュートラルのカバレッジ・ビューのもと、レーティングはインラインを継続する。なお、当社の来06年3月期の新業績をベースに、ゼロ成長DCF(Discounted Cash Flow:将来のキャッシュフローを、割引率を使って現在価値に引き戻すこと)により算出した根源価格は、3300円程度(実質PER20倍程度)と試算され、ヘッジ売りの解消後に株価がこの近辺まで下落すれば、ソニー株にむしろ前向きなスタンスを採りたい」としている。
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