先週末の10月29日までに、主力総合電機各社の2006年3月期の9月中間決算がほぼ出そろった。景気が上向き、個人消費も回復、外国為替相場の円安傾向と総合電機各社にとっては追い風の環境となったが、今回ほど決算に勝ち組と負け組の明暗がはっきりと出たケースも珍しい。各社の9月中間決算の実績と、下期以降の展開について探った。
原価低減の努力が実を結んだ三菱電機
この9月中間決算で勝ち組の代表格といえるのは三菱電機だろう。9月中間期連結決算は、売上高1兆6478億円(前年同期比2.5%増)、営業利益460億円(同6.3%増)、税引き前利益507億2500万円(同58.4%増)、純利益291億600万円(52.5%増)と大幅な増益を達成した。エアコンなど白物家電向け半導体や、記録型DVD機器向けレーザーダイオードなどが好調。液晶テレビも寄与した。半面、携帯電話関連の売上高は減った。なお、2006年3月期通期については、売上高3兆4600億円、営業利益1450億円、税引き前利益1400億円、純利益830億円としている。
三菱電機の業績好調を支えているのは、産業用メカトロニクス事業の売上増による利益拡大や、生産性の向上による原価低減の努力だ。同社では営業利益の上方修正の背景について、産業用メカトロニクス部門の売上高の増加、生産性の改善やコスト削減、外国為替市場での予想を上回る円安による採算の改善を挙げている。
このほか、情報通信システム事業の営業利益が、前期のわずか2億円から今期は一気に180億円(通期予想)へと拡大する見通しにあることが特筆される。これは、富士通と第3世代携帯電話で協業を進めてきたことが功を奏しはじめている。また、電子デバイス事業でも携帯電話事業の採算改善がプラスに働いて利益が好転をみせている。
さらに、家電部門でも、エアコンやシェアが急拡大した冷蔵庫など、いわゆる“白モノ家電”の売れ行きが比較的順調に推移している。販売価格の下落が著しく、採算の悪化に歯止めがかからないデジタル家電製品の比率が小さいことも、こうした局面では利益向上の支援材料となっている。同社の株価は2005年9月半ばから急上昇して、10月上旬に700円台半ばをつけた後、現在は微調整中だが、700円台堅めから中期的には1000円乗せを目指す展開が期待されている。
減収ながら増益を達成した松下電器産業
勝ち組の二番手は松下電器産業だろう。9月中間期連結業績は、売上高こそ4兆2592億円(前年同期比1.4%減)と減収になったものの、営業利益は1710億円(同9.4%増)、純利益は644億円(同14.6%増)と増益を達成した。ブラウン管テレビやオーディオ機器不振などの影響で減収を強いられたものの、プラズマテレビやデジタルカメラ、電子部品などのデバイス部門の販売好調から増益を達成した。こうしたことから、9月中間期の営業利益は従来予想の減益から、一転して増益を達成した。
さらに、同社の中村邦夫社長は決算説明会の席上、プラズマテレビ事業について2008年をめどに画面サイズで「1インチ当たり5000円」を目指して事業を進めていくことを明らかにした。すでに同社は、普及加速の目安とされる1インチ当たり1万円水準を実現しており、さらなるコストダウンによる低価格化で需要拡大を目指すことになる。同社の株価は10月初に2000円乗せで年初来高値をつけた後、下降トレンドが続いていたが、そろそろ調整一巡感が出はじめてきた。株価が75日移動平均線の手前で出直り歩調に転じたことも好材料だ。
中間決算で5期ぶりに黒字化した富士通
富士通が発表した9月中間連結決算は、2000年度以来、中間期としては5期ぶりに最終損益で黒字確保を達成した。会見した小倉正道専務取締役・CFO(最高財務責任者)は、事業構造改革の路線が成果を上げ、売り上げが伸びない中でも利益を確保できる体質が定着しつつあるとの認識を示した。9月中間期連結決算は、売上高2兆1923億円(前年同期比1.2%減)と減収ながら、営業利益475億円(同42.9%増)、経常利益158億円(同4倍)、最終損益76億円(前期は81億円の赤字)と大幅増益で、黒字転換した。
売上高では、半導体を中心とした電子デバイス部門やパソコン部門での競争激化、新紙幣対応特需の反動減などで一部減少したものの、光伝送システムやハードディスクなどの増加でカバーし、ほぼ前年並みとなった。利益面では、不採算プロジェクトの発生防止策などが効果を表したほか、海外需要の好調がけん引役となり、通信事業者向けのネットワークプロダクト、ハードディスクの採算改善で、営業利益率は前年同期の1.5%から2.2%と大幅な改善をみせた。
9月中間期の業績は好調だったが、通期の業績については従来予想を据え置いた。株価は10月5日に819円に年初来高値をつけて以降も、深押しはなくほぼ横ばいの推移で頑強な展開となっている。年初来高値を更新してくれば再び株価の上昇が加速する可能性もある。
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