株式相場が全般に活況のなかで、ハイテク株の不振が指摘されて久しいが、9月26日の東京株式市場では、バブル経済の崩壊後初めて三菱電機の株価が日立製作所の株価を上回って逆転した。
今年に入って、ほぼ8月まで日立の株価は600円台後半、三菱電機の株価は500円台後半とそれぞれ小幅なレンジでの推移となっていた。ところが、9月に入ってまもなく三菱電機の株価が急動意をみせはじめ、一気に700円台半ばまで吹き上げる展開となった。その間、日立の株価上昇ぶりはおとなしい推移となり、株価逆転を許す結果となった。いわゆる“総合電機”のなかで異彩の株価上昇をみせる三菱電機の強さの背景を探った。
三菱電機は9月20日に、2006年3月期の9月中間期および通期の連結業績について上方修正を明らかにした。それによると、9月中間期については、売上高を従来予想の1兆6000億円から1兆6100億円へ、営業利益を同300億円から450億円へ、税引き前利益を同300億円から500億円へ、純利益を同200億円から280億円へとそれぞれ上方修正した。
2006年3月期通期については、売上高3兆4500億円を3兆4600億円に、営業利益1300億円を1450億円へ、税引き前利益1200億円を1400億円へ、純利益750億円を830億円へとそれぞれ上方修正した。この数値からも分かるように、通期の業績見通しは中間の上方修正分を従来予想に単純に積み上げただけで、最終的にはさらなる業績上方修正の可能性も十分残されている。
三菱電機の業績上方修正の理由はなんといっても、産業用メカトロニクス事業の売上増による利益拡大や、生産性の向上による原価低減の努力だ。同社では営業利益の上方修正の背景について、産業用メカトロニクス部門の売上高の増加、生産性の改善やコスト削減、外国為替市場での予想を上回る円安による採算の改善を挙げている。
産業用メカトロニクス事業以外では、情報通信システム事業の営業利益が前期のわずか2億円から今期は一気に180億円(通期予想)へと拡大する見通しにあることが特筆される。これは、富士通と第3世代携帯電話で協業を進めてきたことが功を奏しはじめている。また、電子デバイス事業でも携帯電話事業の採算改善がプラスに働いて利益が好転をみせている。
さらに、家電部門でも、エアコンや冷蔵庫などいわゆる“白モノ家電”の売れ行きが比較的順調な推移をみせている。販売価格の下落が著しく採算の悪化に歯止めがかからないデジタル家電製品のウエイトが小さいことも、こうした局面では利益向上の支援材料となっている。
日立の株価も10月に入ってようやく上昇をみせ、先週末10月7日の終値では718円と三菱電機の711円を辛うじて抜き返しているが、HDDなど不採算事業からの撤退の遅れなどが尾を引いており、業績を反映した株価推移では当面は三菱電機の優位が続きそうだ。
三菱電機の株価が急騰した背景には、社名に「三菱」の名称を冠した三菱グループの企業を9月下旬に集中物色する動きが活発化したことがある。準大手証券の投資情報部では「三菱自動車の株価が急速に回復することで、救済のために三菱自動車に対して第三者割当増資などで資本参加してきた三菱グループの保有する株の評価額が膨らんでいることをきっかけに、外国人投資家などが日本買いの象徴として、一番分かりやすい三菱グループ各社に買いを継続しているとう実態もありそうだ」としている。
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